他1 ページ:6 「…――」 重たいまぶたを開き、まず見えたのは高い天井。 まだぼんやりとした意識の中、自分を見つめている者に気がつく。 「――小十郎?」 「起きられましたか、梵天丸様。」 今日初めて見る、小十郎の微笑む顔に、梵天丸も安堵の表情を浮かべた。 だが、それもつかの間。 小十郎の顔から、ふと手元に目線を移せば 「――…!?」 鈍色に光る小刀が握られているではないか。 「こ、小十郎っ!?何を――」 「梵天丸様」 笑顔は消え、悲しい表情で梵天丸を見つめる。 「私は、貴方を必要以上に苦しめてしまった。――殿も、きっと私を許してはくれないでしょう」 「そんなっ…」 「責任を取って、私は腹を切ります。――梵天丸様。様々な無礼、お許し下さい」 小十郎が小刀の鞘を抜き、自分の腹に突き立てようとした瞬間。 ばちん、と乾いた音が鳴り、小十郎の頬に痛みと熱が走る。 すぐに叩かれたのだとわかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |