約束するよ
「あ、このジャムうまっ」
「あ!」
洗濯物を畳んでいたら、いつの間にか勝手にベルがキッチンにあったジャムを食べていた
あれから、ベルはずっと看病してくれ……たんだろうな、うん。
タオルを頭に乗せてくれたのはいいけど、雑巾だったし
食器割っちゃったし
食べ物採りに行ったのはいいけど、カラス捕まえてくるし
頑張ってくれたんだけれど……さ、
風邪が治って数日後
今日も何しに来たか知らないけど
最近、彼はとても大人しい。血なんかも求めて来る事が無くなった
どうしてだろう……
「これ何ベリー?」
「普通のベリーです。名前は…忘れちゃいました」
「ふーん」
はぁ…残り少なかったのに、
殆ど食べちゃいましたよ……
「なぁ、これ王子にくんない?前食べて旨かったからシェフに頼んだんだけど……どのベリー使ってもだめなんだよ」
「ま、前に?」
「姫が風邪引いた時に少し食べた」
だからか!
最近やけにジャムが減るなぁ、とか思ったら!!
「……それに使ってるベリーはめったに採れませんよ。よく育たないんで、ここだと」
「あぁ、ここ、午前中はさみぃもんな」
……実はあなたのお城が影になって殆ど当たらないー…なんて、言えるはずがないわよね…ははっ
「やっぱ城が邪魔かー…壊すか?」
気付いていらっしゃる!!
「しししっ、じょーだん!
じゃあ今度ジャム出来たら頂戴よ」
「……いいですけど」
逆らえないんで(断ったらどうなるか)
「けってー!出来た時はオレんとこまで持ってきてね」
「わかりました……ん?」
「何」
「つまり……お城まで来い、と」
「当たり前じゃん。なんで王子がわざわざ取りに来なきゃいけねーんだよ」
「けど……」
入場パスとかどうするんですか
「ベル王子にジャムをお届けに参りました」なんて言ったら、捕まるよ私。
「んー…じゃあこれ持ってて」
ごそごそとポケットを探る
出てきたのは
「ナ、ナイフなんか持っていったら余計ダメですよ!」
「あり、間違えた。んと…」
はい、と左手を引っぱられ、私の指に何かをはめた
「ゆ、びわ?」
「そ。王子のティアラと同じ形のやつ
これで大丈夫だから」
「はぁ、」
これで大丈夫なのか。
「じゃ、約束ね♪」
歯を見せて笑う姿はいつもと変わらなかった
けど、本当に、ありえないほど不覚に、可愛いと思ってしまった……
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