気付かない事だって
ごろん、と今は自分の物となったベットの上で寝転がる
あれから1ヶ月程たった
私の生活は、180度変わってしまった
家族もいない私にとって、ただ寂しさと虚しさしか感じなかった
あれから、あのベルって人は時々、私の血を奪いに来る
時には痛みに耐えられなくて気絶して
目を覚ましたら夢だったんじゃないかと思う事がある
けれど、お母さんがいない
だから、それは受け止めたくない事実
ベルは気まぐれに、今は消えた頬の傷口から出た私の血を"旨い"と言っただけなのかもしれないとも思った
でも、それから何度も血を求めてくる
でも、殺さない
ドラキュラみたいな人
それより、ベルがこの国の王子だなんて、考えられない
ここの王子は、8年前のクーデターで行方不明になって
王自ら死亡したと私達国民に告げたんだから
だから……王子は存在しないはず
―ソレ、本当?―
………って、あれ?
待って…今、何?
「王子、は……生きてた…?」
「しししっ、せーかい♪」
「!?」
いつの間にかいたベル
再び、恐怖が蘇る
「あ……」
「大丈夫。今日は血ぃ取んないから」
「どうして……ここに…」
「鍵空いてたし」
鍵、か……
「………鍵なんて、ないんですよ。随分前に壊れて、そのままなんです」
「は?直さないの?誰か入ってくんじゃん」
「……何処の家もこんなのですから、皆さん入りませんよ」
「?」
この人、本当に分からないの?
他人の家に入っても食べ物とか金目の物なんてほとんど無いし
わざわざそんな事して泥棒で捕まるなら、恥を忍んであの場所に行った方がマシだもの
「皆さん…お金ないですからね」
「ふぅん」
「………何しに来たんですか?私の血取りに来たんじゃないんでしょう?」
「見舞いに来た」
「……は?」
「だってお前、風邪引いてんじゃん」
「っ……」
……昨日、遠く離れた街の中心部に出掛けた帰りに大雨が降って、そのまま家に帰って寝たのを思い出す
「だから、王子が看病しにきた。ししっ、オレって優しー」
………自分で"優しい"なんて言うものじゃないと思うんだけど……
「ふふっ……」
「何笑ってんだよー…」
「いえ、何でもないです」
(少し距離が近付いた瞬間)
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