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ドラキュラの様に










「そ。この国のね」


この人が、王子?


「ありえない……」

「それがありえちゃうの」

「ありえない…!!だって……!!」





この国の王子様は………!!




「ん‥」


目は見えないけど、凄く不満そうな顔をしていた
口元だけで、わかるぐらいに。




「………お前、何?」

「え…」

「お前誰だって聞いてんだよ」

「!!」




近くにあった木に、おもいきり叩き付けられる


「あ゛っ…」

想像以上に背中が痛くて、涙が出る



「お前、何を知ってんだよ」

「ひっ…!!」


やっとわかった右手に持っているナイフ
太陽の光が反射して、残酷な物なのにキラキラと輝いていた





「このババアから聞いたのか?」

「っ…」

「どうなのか聞いてんだけど」


「―!!!」


頬に、その鋭い刃が向けられ
ぷつりと音を立てながら、痛みと共に、自分の血が流れ出てくるのがわかった



「しししっ……きれーな血」

「あっ…」


生暖かい何かが、その傷口を舐めるのがわかった


「いっ……」


ぐっと、再びナイフがその傷口を深く沈め、血が流れていく



「や…め……」

「ん…」


その度にこの人が舐めとる
まるで、コーンから溶けて零れるソフトクリームを舐めるかのように





「お前、殺すのもったいないな」

「え……?」

「ぶっ殺そうかと思ったけど、お前……血が旨いんだよね」

「ン……」

指でタイミングよく流れた血を掬い、私の目の前でペロッと舐めてみせる


ぞくっと背筋が凍った瞬間だった。






「オレはベルフェゴール。ベルでいい
お前は姫でいいよな」

「私の名前……なんで知って……」

「コイツが死ぬ瞬間に、お前の名前呼んでたし」

「あ……‥」



目の前の恐怖で忘れかけてた……

そうだ…、この人……
お母さんを…。私の大切な、たった1人の家族を……



「しししっ、そんな悲しそうな顔すんなって。この王子が姫を側室として雇ってやるから♪」

「なっ……そく、しつ…!?」

「勘違いすんなよ。オレはただお前の血がほしいだけだし」

「……ち…?」

「そ。





姫の鮮明で旨い血がほしい」



涙が止まった瞬間だった




再び無邪気に笑うこの人に言い返す言葉も見つからず
ただ、初めて長い前髪から微かに見えるルビー色の瞳を見つめるしかなかった……。





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