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VOICE
序章 06
「っと…、小森馨、18歳。宜しく」

葛西家の自己紹介が一通り終わった所で、馨は曲げていた背筋をピンッと伸ばし会釈した。

「カオル、ね…。まぁ、別に畏まる事ないよ。俺から頼みたい訳だし」

吸い終えた煙草の先端を灰皿に押し付け、郁斗は相変わらずの無表情で馨を宥めた。

「俺達のバンドは…、自分で言うのも何だけど、兄妹バンドって事で話題性も相俟って割と知名度のある方だ」
「オマケに美男美女揃いという事もまた一理。テクニックは勿論だけどね。これ、バンドのデモ音源」

澪は不敵な笑みを浮かべ、サラリと自慢しながら、ショルダーバッグから音楽プレーヤーを取り出した。口答えすると面倒なタイプだ。
馨はそれを受け取り、イヤホンを耳に当て、音源を再生した。ドラムスティックのカウントから入った演奏は、アップテンポなロック調。力強くリズムを刻むドラムに呼応する様に重低音を響かせるベース、キレのあるダイナミックでありながら繊細さを持ち合わせたギターに加わるキーボードの音色総てが曲全体の雰囲気にマッチしている。郁斗の声もパワーがありながらも、ファルセットにビブラート、抑揚の付け方に至る迄申し分なく、完成度はかなり高い。充分このままでやっていけるレベルだ。否、寧ろこの状態に何かを付加した所で、マイナスになる程の完成度だと馨は思った。

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