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VOICE
序章 04
「聴いてくれて有り難う。お兄さんもギターやっとるん?」

東京での初めての客がこれ程誉めてくれるだなんて思ってもみなかった馨は、照れ隠しに後頭部を掻きながら、黒髪の青年に訊いた。ギターのメーカーを口に出したという事は、或る程度の知識はあるのだろう。

「あぁ、俺達兄妹4人でバンドやってんだ」
「兄妹?あ、確かに皆似とんなぁ」

まじまじと4人を見比べると、顔のパーツが所々似ている。しかし、兄妹でバンドをやっているだなんて珍しい。

「今、俺がギターボーカルやってるんだけど、俺ギターに専念したくてボーカル探してたんだ。会ったばかりではあるけど、君の声に惚れた。話だけでも聞く気ないか?」

青年の唐突な申し出に、馨は目を丸くした。後の3人は誰1人異論を出す事なく、青年の提案に肯定的な態度を示している。そんな彼等と視線を交える内に、頷いてしまっている自分が居た。
悪い人達ではないだろう。知人も友人も居ない東京で音楽の話が出来る人が居ると心強いし、彼等のバンドに加入するかは別として、仲良くなって損はしないだろう。馨は軽い気持ちで早々にその場を後にし、近くのファミレスへと移動した。
客も疎らな深夜の店内。馨を挟む様に先刻の青年と少女が左右に、馨の向かいにインテリ風な青年、左隣に少年という位置で腰を下ろす。皆、思い思いにドリンクをオーダーし終えると、黒髪の青年が改めて口を開いた。

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