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VOICE
序章 03
無表情で一見怖いが、意外と喋る兄さんだな…、本当にホストかと思いつつ、馨はギターをしっかり抱え、小さく咳払いし、右手の指先にピックを握り締め、弦を弾いた。スコアなんて持ち合わせない。コードも歌詞も総て頭に入っている。指が、口が、無意識でもしなやかに、正確に動く。渾身の自信作が、周囲に強かに響き渡る。
自然と青年と共に居た3人も、馨の前に集まっていた。瞼を閉じ、聖書でも静聴しているかの様にじっと俯く少女、馨の左手の動きを黙々と目で追う青年、軽く頭を振りリズムを取る少年。
まるで地元で演奏しているかの様だった。自分の歌を聴いてくれる人が居る。それだけで、馨にはやる気が満ち溢れていた。

5、6分程度の曲を歌い終え、満足感に溢れた馨は自然と口許に笑みを称えながら、軽く頭を下げた。

「…スゲー!声もギターもかなり良い!」

胡座を掻いて聴いていた仔犬の様な顔をした金髪の少年は、声を上げながら両手を叩いた。

「うん、顔もスタイルも申し分ない」
「出たー、澪ちゃんの面食い発言!」

後ろ側で立ったまま腕組みしたインテリ風の雰囲気を放つ青年の不可解な言葉に、先刻の少年がすかさずツッコミを入れる。その少年の横に並び、パステルカラーの衣類を纏い、長い髪を緩やかに巻いた少女が、大きな瞳を輝かせ、馨を見つめている。

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