ステレオ 君の声が聞こえる。 頭の中で鮮明な衛星放送のようにはっきりと。 「火神君」 「なんだよ」 早くバスケしてえ。って聞こえる。 全く授業も真面目に受けて下さい。 シャープペンシルの走る音に混じって聞こえる君の声はいつもバスケな事ばかり。 鮮明で直球な君の欲望に時々教師の話が音飛ぶ。 好きだ好きだ好きだ。 頭の中を全部君で埋め尽くしてしまいたい。君の声だけで満たしてしまいたい。 出来ない事を並べても僕の中の時間が止まるだけ。ノートは変わらずペンが走る。 休み時間の火神君は静かだ。多分押し込める声がない。 「なあ黒子」 この一瞬を除いては。 「次こそは青峰に勝ってやるぜ」 「そうですね」 突然重複する服音声。どうしても聞こえない君の声。 「君は本当にバスケが好きですね」 「ああ好きだぜ」 好き、それだけははっきりと聞こえる。全ての声が好きに重複して僕の心を落ち着ける。 「僕も好きです」 君の声に重ねて、好きを。 end 黒子→火神 ステレオが二重音なんで。 → |