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綺麗な花にはトゲがある


私はナイア。装飾職人をしているわ。
本業は武器職なんだけど装飾の方が身に合ってるみたい。
別にライバルに負けて別の道に逃げたってわけじゃないわよ。
武器職人の道も諦めたわけじゃないんだからね。

師であるオフィリアの勧めでアトリエの一部で指輪やピアスの装飾品を売っているのだけど、これが結構人気あるのよね。
いつかヒメユリが身に付ける装飾品を作りたい。私のささやかな野望。




「また腕を上げたわねナイア」

黒髪の女性が加工したばかりの装飾品の髪飾りを手に取りナイアに話し掛けた。
師、オフィリアである。
毛先の跳ねた長髪に髪飾りをあてがうと、金色に輝くゴールドストーンによって黒髪の艶やかを引き立てた。

「オフィリアの名を狙っていますもの当然よ」
「弟子が競い技術を高めあっていると教えがいがあるわ」

髪飾りを装飾台に戻したオフィリアは、そういって鍛練中の武器を取り出した。雛型であるのにその造形は既に美しく一つの作品であるようだった。
これが世界に二つとない造形の武器になると思うと考えただけで心臓が高鳴り踊る。
だが興奮と同時に絶望にも似た不安が胸を締め付けた。この造形を越えて奪えるのだろうかオフィリアの名を。

それをやろうとしている男がいる。
私が羨む才能を持つ、武器造りしか興味のない馬鹿男。

「師匠はやはりレンスが相応しいと思っていますか」
「そうね彼の造形は群を抜いて素晴らしいと思う。あなたはどう思っているのナイア」

あたしは…、目線を外し口付くむ。わかってる、でも認めたくないし負けたくない。

「負ける気はない、でも勝つには険しい道だと思います」
「素直ね」

オフィリアが工房に籠った。こうなると半日は出てこない。
あの剣はどのような形に仕上げられるのだろう。期待に胸踊らせながら装飾品の加工を行う。




あたしとレンスは幼なじみ。無論ヒメユリ、ヤマモモ兄妹とも交流がある。
幼い頃から武器職人のオフィリアに習い共に切磋琢磨してきた。
あたしも決して技量がなかったわけではない。それ以上にレンスの才能が飛び抜けて勝っていた。
負けたくない、だからあたしはあいつに出来ない繊細な装飾品を極める事にした。
でもあいつと同じ土俵に立っていないのだから不戦敗も良いところだわ。

「駄目ね。邪念が入りすぎるわ」
少し削り過ぎた模様。溜め息と仰ぐ天井に、焦りはしっかり刻まれる。

「コーヒーでも入れましょう。あと師匠が小腹を満たせる軽食も作っておいた方が良いわね」


でも最近は装飾作りも楽しいのよね。ヒメユリが褒めてくれるからかしら。

あたしはナイア、武器職人よ。








end
ナイアはレンスが素直にヒメユリに求愛すれば退くつもりはあるんだけど、武器一筋で照れ隠しでぶっきらぼうにあしらう様にイラついて許せないみたいな。
オフィリアは武器造りだけで他はからしき駄目。



あきゅろす。
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