風の居場所
鐘ガ鳴ッタ
リボーン達“Arcobaleno(アルコバレーノ)”の呪いが解け早10年。
俺は結局、中学卒業と共にVONGOLAX世となり隼人や武、クロームと渡伊した。
勿論、先に卒業していた了平さん、恭弥さん、骸は既にX世守護者として仕事を始めていた。
そして今年の春、中学を卒業したランボと飛び級をして弱冠12歳で大学を卒業したリボーンが加わりボンゴレ本部は賑やかさを増している。
京子やハル、花もボンゴレの表向きの会社に就職し、時間があるときは本部まで訪ねてきてくれる。
その時は至福の一時だ。
そんな日々が日常になっていく中、この頃ディーノさんとバジル、父さんがリボーンを訪ねて来る回数が多い気がするんだ。
ディーノさんがよく訪ねてくるのは元々だけど、週1では無かったはずだ。
それに普段はボンゴレに関係してない門外顧問“CEDEF(チェデフ)”である2人が来ても大丈夫なのだろうか…
しかも骸が気になるファミリーについて調べてくると言って犬と千種を連れて出て行って一週間も連絡を寄越さないし…
あんまり連絡を寄越さない奴ではあるが何故か心配になってくる。
こんな様子では今日の主要同盟ファミリーとの会合はどうなるんだろう…
たしか“VAREA(ヴァリアー)”も来るって言ってたし、無事に会合が終わってくれたら良いんだけどなー…
この予感は超直感だったのか、虚しく当たってしまうことになる。
Θ
「全員揃いましたか?」
俺は周りを見渡し確認する。
今回の会合はボンゴレでやっているから仕切らなくてはいけないのは俺だ。
はっきり言ってこのメンツを仕切れる気は毎回しない。
「綱吉クン、そんなに眉間にシワを寄せてたらγクンみたいになっちゃうよ」
「テメッ!やっぱり姫、オレは同盟の中に白蘭(コイツ)のファミリーが入っているのは気に入りません!!」
「γ落ち着いて下さい」
「そうですよ。せっかくこれだけのトップが集まっているんです。時間が勿体ないですよ。白蘭サンも他のファミリーの人を煽らないで下さい」
ユニや正一みたいに止めてくれる人も居るが、なんせ皆一癖もふた癖もある人達だ。
溜め息をつくと隣の炎真が気付いたみたいでこちらを見てくる。
「ツナもこの前の僕みたいにしたら早いのに」
と笑いながら言われるのだが、炎真の笑いが黒色な気がするのは気のせいでは無い。
前回、シモンファミリーで行われた会合を思い出し冷や汗を軽くかいていると炎真と反対の席の方からも声が聞こえた。
「XANXUS、この間の言っていたオレのシマで立て続けに起こる発砲事件についてなんだが、武器を流している奴が分かった。仕事を頼まれてくれねーか?」
「…報酬は」
「よしっ。お前等のSランクの報酬分だ」
「カス鮫」
「う゛ぉい…わかってる。跳ね馬、後で詳しいことを聞く」
「頼んだぜ」
うわっ…マフィアらしい会話だ。
「って…!!なんでナチュラルにここで商談しちゃってるんですかっ!白蘭とγさんもいい加減睨み合わないでください。話が―――」
“始められないじゃないですか!”
その言葉は俺の口から言う前に扉が乱暴に開けられる。
何事かと思い全員の視線が扉の方へ動く。
「ボンゴレっ!大変だぴょん!!」
「犬…それだけじゃ分かんないよ」
「クフフ…千種の言う通りです。にしても、タイミング悪かったみたいですね」
焦る犬とそれを窘める千種。
そして俺達と同じくらいであろう年の気絶している女の人を世間で言う“お姫様だっこ”する骸。
殆どの人が声を出せない中、椅子を蹴って立ち上がる音が二つ。
「サラっ!!?」
「寮母っ!!?」
ディーノさんとスクアーロだ。
二人の視線は骸の腕の中にいる女の人に向いている。
「この子はサラや寮母という人とは違います。多分この中で知っているのは僕達だけでしょう」
骸が冷たい視線を二人によこす。
心なしか、少し骸の腕の力が強くなった気がする。
「お前等なに騒いでんだ。ダメツナ、しっかり仕切りやがr―――」
ボルサリーノの深く被り直しながら入ってくるリボーンは、口をパクパクし女の人を指差すディーノを見てそちらの方へと顔を向け止まった。
「サラ………!!?」
ポーカーフェイスを常とするリボーンがここまで驚いた顔をする事なんて見たことがない。
「リボーン、君まで…。とりあえず綱吉君、医務室をお借りします」
「あぁ」
深いため息をつき、身をひるがえして部屋を出ようとする骸は一度立ち止まり吐き捨てるように言う。
「………エストラーネオの残党が今ごろ発見されたんです。彼女は其処から救出してきたんですよ。詳しいことは千種と犬から聞いて下さい」
どうやらこれが超直感が感じたことらしい。
この日を境にまた俺達は非日常の日々に巻き込まれてゆく――――
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