空を見上げて
標的1 その2
「どうかしましたか?」
口を開けてアホ面をしていたであろう私を見て、黒髪の女の子が心配そうに声をかけてくる。
『あっ、何でもないよ。それより…ここって何処?』
鼻を突く消毒液の匂いがするから多分病院。
だけど、何故羅針盤に行こうとした私が病院なんかに来たのか。
そして此処は大阪なのかを確認しなければいけない。
出来れば予想とは違う答えが返って来てほしい。
いや、予想と同じだったらかなりうれしいのだがまず有り得ない…はずだ。
そんな私の思いはよそに、茶髪の子が言った言葉は予想通りだった。
「此処は並盛中央病院B棟三階だよ。って、さっきエレベーターから出てきたよね…」
茶髪の子はご丁寧に聞きたいことをちゃんと答えてくれた。
つまり彼女言いたいことは、何故エレベーターから出てきたのにここの場所が分からないのかということだろう。
しかし分からなくて普通と言うか分かったら凄い。
なんせエレベーターから出たら此処だつたのだから。
『う、うん。けど、さっきまで阿倍野に…』
「アベノって何処ですか?」
黒髪の子が首をひねりながら聞いてくる。
茶髪の子も目を点にしているから知らないのだろう。
『えっとね…大阪』
「つまり、大阪でエレベーターに乗って、降りたら此処だったってこと?」
『そんな感じ』
茶髪の子の質問に首を縦に振ると、二人とも腕を組んで「うーん…」と唸りながら考え始めた。
そんな二人を見て私はつい聞いてしまった。
『…二人とも私が嘘をついているとか思わないの?』
はっきり言ってエレベーターに乗っていたら場所が変わっていたなど、ボクっ子の親友に言っても笑い飛ばされるだけだろう。
なのに初対面の二人はまるで自分の事のように考えてくれている。
さらには私が問いかけたことに首をあわせて横に振り否定した。
やっぱ二人とも外見だけではなく中身もあの二人に似ている。
ついそんなことを思っていると、黒髪の子がハッとした顔でこちらを向いて手を差し伸べてながら微笑んだ。
「ハルは三浦ハルです!」
「私は笹川京子。宜しくね」
茶髪の子、もとい京子は特上の笑顔でハルに続いて手を差し伸べてきた。
…うん、これは夢だ。
大好きなマンガの、それこそ三度のご飯より大好きな“家庭教師ヒットマンREBORN!”の中のキャラの二人が私の目の前に居るはずがない。
もしくはあの、夢小説でよく主人公が異世界へ行く“トリップ”というやつなのか。
しかし、私は夢小説の主人公達みたいに人間離れた運動神経もっている訳でも何かこれといって特技が有るわけではない。
「ほんとに大丈夫…?」
京子が、そう言い考えていて周りが見えなくなっていた私の顔を覗き込んでくる。
『ちょっと考え事してただけだから大丈夫だよ。それより、私は桐谷 柚。ハル、京子宜しくね』
そう言って二人の手をとり笑う。
ほんとは天に舞い上がる嬉しさの筈なのに、どこか心の底から喜べてない自分がいた。
〜標的1 END〜
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