空を見上げて
標的11 その4
「…何でこれだけ怪我したのかは聞かねーのかよ」
あれ?
昨日とデジャヴ…。
『言わないってことは聞かれたくないんでしょ?ただ私は、目の前に居る怪我人を治療してるだけ。どうも私、世話焼きみたいなんで』
「…ありがとな」
小さい声だったが、ちょうど頬の火傷に絆創膏を貼っていた私の耳には届いた。
『はい終了。今日さえ安静にしてたら明日からは動けると思うよ』
そう素人がみた感じで伝えるが、2人とも沈んだままだ。
警察を説得し終えた恭弥の方へお礼を言いに行こうと思ったのだが、その足を止める。
『はぁ…。だから、今日は休んで明日から修行すればいいでしょ。“命”ある限り敵は“勝てないぐらいがちょうどいい”。でしょ?』
言い終えると同時に恭弥の方へ走り出す。
結局は明日から専属家庭教師がついて修行はするのだろうけど、背中を押すぐらいはしても良いだろう。
「草食動物が一匹居ない…」
『…ツナは病院だよ、たぶん。それにしても、ありがとう。お陰で助かった』
「別に。めんどくさくなる前に終わったし。何も君のおかげではないから」
その言葉につい『ツンデレ…!』と呟くと照れ隠しにか、トンファーが頭を狙って降ってくる。
それをとっさに避けると感嘆の声を出された。
「へぇ…やっぱりレベルが上がってるね。明日、登校したら応接室」
…もしかしなくても戦えって事だよね。
けど、明日はディーノさんが恭弥の所に行くはず。
それなら戦いになる前にディーノさんに押し付けたらいいだろう。
少し罪悪感もあるが、修行させるために来るのだから結果オーライのはず。
というか、今すぐと言われなかっただけ助かった。
胸をなで下ろしているとひらりとバイクに飛び乗る恭弥。
「さっき草壁から並中に君目当ての輩が集まってきていると連絡があってね。1人で咬み殺したいから並中に近づかないで」
『了解』
言いたいことだけ言って行ってしまった背中に向かって言う。
それのお陰で私の寿命が延びた訳だが、一体この町には何人不良がいるのだろう、と真剣に考えながら私は次の目的地へと足を運んだ。
〜標的11 END〜
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