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「伊月先輩」
「うん?」
「バレー部の…あの、髪の短い人いるじゃないですか」
その言葉にドキリとする。
バレー部のショートカットといったら
「え、あ…あぁ、高橋さん、かな?」
「高橋さんていうんですか」
黒子の反応にいちいちドキドキする。
普段あまり他人…特に女子に興味を示さない黒子が、なぜ高橋のことを
「伊月先輩…高橋さんのこと、よく見てますよね」
「!!!」
手にしていた缶を思わず取り落した。
カランカランと音をたてて缶が転がっていく。
中身が入っていなかったのは幸いか。
沈黙が広がった後、やっとのことで伊月が声を絞り出した。
「……っそん、なこと…いや、その…」
「………」
その声も尻すぼみに消えていき、やはり訪れる気まずい沈黙。
「…すみませんでした」
「なにが…」
ああもう、穴があったら入りたい。
黒子の心底すまなそうな謝罪と、逸らされた視線に、バレてしまったことは明白である。
顔が熱くなっていくのを感じながら、周りに黒子以外誰もいなかったことに感謝した。
2012.9.22
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