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そして、僕らは秘密を共有する。
#03

ドクターが帰ってから3時間程が経過した。
リボーンも先程よりは、呼吸が大分楽そうになった。


今まで男だと認識していたのが信じられない。

横に眠る人は本当にリボーンなのか自信がなくなる程に、弱々しい少女に見えた。

…あぁ、あの強い眼差しが今は見れないからか…。
リボーンの深い色の瞳は、常に何かに飢(かつ)えていて、それこそがリボーンそのものだった。



「…ん…」

微かにだが意識が戻り始めているのか、何かを探す仕草をしている。
…恐らくは銃なのだろう。

「リボーン。大丈夫だよ。ここはランボさんの家だよ。大丈夫、ここにはランボさんしか居ない」

はっきりと俺だと判るように、そう囁く。
リボーンにとって、俺であることが安堵する要因になるかは微妙だけど。
それでも、言わないよりはマシだろう。

その言葉に呼応するかのようにリボーンは目を醒ました。

「……ア、ホ牛…か?俺は…どうして…?」

「…覚えていない?雨に打たれたリボーンが俺の家に来たんだ。風邪かな?熱を出して倒れたんだよ」

「……あぁ……そうか……そうだった、な……」

言いながらも身体を起こそうとするリボーン。
額に張り付く髪を煩わしげに掻き上げると、栗色の髪がズルリと取れた。

…あ、ウィッグ取るの忘れてた。

「…何だ…?」

「医者に見せるのに擬装用のウィッグを被せたの。あんたが意識失う程だったから心配で医者を呼んだんだ」

「…あぁ…そう、か…身体…知って…しまったんだな」

「言っとくけど、バスルームで倒れるあんたの責任だから。
医者に見せるに当たっては、俺が雨の中拾った人っていうことにしたよ」

『だから心配しなくていいよ』とは敢えて言わないけど。
病人を虐めるのは趣味じゃないから今は何も聞かない。

「…取り合えず、もう少し寝てなよ。朝まではまだ時間があるし…どこか連絡する必要あるなら、俺は外で待つからさ?」

「…必要ない…帰る…」

「どこに?ボンゴレ以外の所なら却下だよ。病人だから。ボンゴレの屋敷なら俺が送る…で事情を説明する」

「…俺を脅してるつもりか…」

「そうじゃないでしょう?心配しているんだ…リボーンにとっては迷惑だろうし不愉快かも知れないけどね」

普段のリボーンになら、決して言えない言葉だったかもしれないが、それを気にするよりも、この病人を放り出す方がとても気掛かりなことだった。

「今更なんだから…このまま大人しく寝て、回復しちゃった方が絶対話が早いと思うよ?」

「………分かった…ボンゴレへの連絡は不要だ……いいか『連絡は不要だ』…」

「ハイハイ。強気な病人だなぁ。
取り合えず一度着替えて、水分補給してね。
あと薬も…出来れば何か食べて欲しいな…果物とかアイスクリームとかでも良いから食べない?」

「……桃缶と……バニラアイス」

小声でそう、答えるリボーン。

……うゎ。可愛いと思っちゃったじゃないか…リボーン相手に。

桃缶とバニラアイスって、沢田家の風邪を引いた子への特別メニューだ。

こんな時、思う。
リボーンにとっても日本での生活は、後の日々に影響を与えているのだと。

世界中を駆け巡っているリボーンでも、日本の沢田家は特別だったのだと思うと、一緒に暮らしていた身としてはくすぐったい気持ちになる。

「黄桃缶があるよ。アイスもね」

着替えとタオルを渡しながらそう答え、キッチンに向かう。
求められなくても後で出そうかと思っていたので、黄桃缶も冷やしてある。

口の大きいグラスにバニラアイスと桃をスライスしたものを乗せる。
…ついでだからウエハースも付けちゃえ。
とても懐かしい組み合わせで、思わず笑みが出る。

「リボーン。着替え終わった?そっちに行くよ?」

「……アホ牛……医者は何と言っていた?」

「え?風邪による高熱と生理による貧血…だと……って、リボーン?どうしたの?」

リボーンは普段からポーカーフェイスを崩さない。

特に俺には意地悪そうな笑いを見せることはあっても、動揺したり、不安そうな表情をしたりなんて、有り得ない。
その『有り得ない』表情をしたリボーンに驚きを隠せない。

「……てだ……」

「え?何?」

俯きながら小声で何か喋るリボーン。
あまりに小さくて殆ど聞こえない。

「…初めて…だ」

…はい?何が?
……まさかと、思いたいけど。
……生理が、とか……?
……初潮ってやつ?



…取り合えず、聞き返して良いものか非常に迷うんですが。






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