そして、僕らは秘密を共有する。
#01
季節柄珍しい、突然のスコールのような雨。
正にバケツの底が抜けたような…という表現が相応しい、そんな雨が降り注ぐ夜。
既に帰宅し、のんびりとした時間を過ごしていた身にとっては、その雨自体はあまり関係なかったのだけれど。
…そう、突然の訪問者が現れなければ…。
やや乱暴に鳴らされる、ドアベル。
その普通とは違う状況に、流石にドアスコープではなくセキュリティカメラで様子を伺う。
そして、そこに映る人物に思わず息を呑んだ。
…リボーン。
やや俯き加減なのと、ボルサリーノのせいで顔を窺うことは出来ないが、間違えようのない人物がそこに映し出されていた。
慌ててドアに駆け寄りセキュリティを解除する。
ドアを開ければそこに居るのは、余す事なく濡れネズミのリボーンだった。
「…風呂貸せ…」
そう呟く声にドキリとした。余りにも掠れていた。
「…リボーン?」
驚きを隠せない自分の声に、特に返事をすることもなく彼は入って来たため、慌ててバスルームへ案内した。
「えっと。家のバスタブ深めで、日本式の入浴も出来るからね…温まってね?」
言いながら、熱めの湯を大量にバスタブに流し込む。
俺もそうだけど、リボーンも日本での入浴方法を好んでいたのは覚えていた。
取り合えず、バスタオルを預けてバスルームから離れてドアを閉める。
…着替え…いるよね。やっぱり。
リボーンが着るような服は正直、持っていない。
着るかどうか判らないけど一応シャツやらスウェットやらを用意してみる。
数少ない無地物を選んでみたりしたところを評価して、リボーンも妥協してくれればいいなぁ、なんて思ってみたり。
リボーンが傲慢なのは何時ものことなので、こういった事態にも特にこれといった感情は付随しないあたりが10年来の付き合いというものか。
…俺の家をリボーンが知っていたのはオドロキだったが、流石に情報としては把握していたということなのだろう。
それにしても、あれ、風邪だよね?
変声期前の高めの声が酷く掠れていた。
…リボーンでも風邪引くんだ。
長い付き合いだけど彼が具合悪そうにしているのは殆ど見たことがない。
そんなことをつらつらと考えながらも、リボーンのために食事を用意する。
リゾットぐらいなら食べれるよね?
なんか露骨に病人食を作るのはやり過ぎのような気がするし。
コトコトとリゾットの煮える音と扉向こうのシャワー音。
なんか凄く不思議な時間。
リボーンのために食事を作ることがあろうとは。
いや、別に頼まれた訳じゃないけどね。
…しかしいくら何でも遅くない?
リゾット出来ちゃったんですけど。
シャワー音もずっと途切れない感じだし…て、まさか倒れてるとか…言わないよね?リボーン。
先程の彼の様子を見るに絶対無いと言え無いところが困る。
…声、掛けてもいいよね?
「リボーン?大丈夫?ご飯作ったけど食べる?」
恐る恐る扉越しに声を掛ける。
…返事無し。
「リボーン…開けるよ?」
言いながらも、殴られるのを覚悟しているのはなんだかな〜とは思う。
リボーンって手ぇ早いよね。
「!リボーン!大丈夫!?」
キッチリシッカリ倒れてます!!
バスタブにもたれる様にして座り込み、シャワーを被り続ける状態で。
慌ててシャワーを止め、声を掛けるが反応がまるで無い。完全に失神状態だ。
シャワーを被り続けていただろうに、はっきり判る程に顔色が悪い。
足元を見遣ると血の流れた痕跡があり、ドキリとした。怪我してる?
いきなり動かすのも躊躇われ、その場にバスタオルを敷き、横たえる。
………。
………………。
………はい?………。
リボーン…だよねこの人。
ナンカ、オンナノコニ、ミエマスガ。
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