【花咲く季節】 13 ふぅ、と一息ついて、今度こそ席に着こうとした、のだが。 あーあ。 うっかり、気がついちゃったよ、こんちくしょうめ…! 「…ちょっと、何だよ、あいつ」 「なに雪先輩としゃべってんだ?」 「ありえねぇ、ムカツクー!」 そんな言葉と、刺さる視線。 あーあーはいはいー俺は何もしてないだろうがよー! とりあえず、無視だ、無視! これからのことを考えれば、そんなことにいちいち構っていられないし、今更気にしたところで胃痛が増すだけだもんな。 …ああ。 なんでそんなことに慣れなきゃならんのかと…! 「お。早かったな、高倉」 かけられた声に顔を上げれば、爽やかスマイルの土橋の姿があった。 「…おー…」 「悪いな。部活の方にちょっと顔出してたんで、遅れた」 「……」 そういえば。 色々読めないヤツとはいえ、こうやって普通に話しかけてくれる存在って、ここでは凄く貴重なんだよな…。 なんでそんな当たり前のことに頭を悩めなくちゃならんのかは、考えない方が良いとして。 深見先輩とは、また違った意味でほっとする。 「…? なんだ、どうかしたか?」 「うん、いや…」 不思議そうな土橋を見上げながら、しみじみと思う。 「…最初からお前と一緒に来とけばよかったなぁ、と思って」 「はぁ?」 そうしておけば、この突き刺さる視線の意味も若干変わっていたかもしれない。 なんて思うのは、楽観視しすぎだろうか? [前へ][次へ] [戻る] |