泣いた分だけ笑うから (ran27) 捏造十年後 ころりと掌の中で指輪が転がった。 小さな指輪。 こうしているとこれが膨大な力を秘めた兵器であることが嘘のようだ。 雷のボンゴレリング。 他の人間には信じられないだろうが、ランボにとってこれはそう特別な物ではなかった。 その価値を知る前からずっと自分が持っていたから、ランボの中でボンゴレリングは数あるおもちゃの一つにすぎなかった。 なのに、その価値に気付いたのはいつだっただろう。 この小さな指輪が、綱吉とランボを繋ぐ唯一のものだと。 この指輪がなければ、ランボは綱吉の側にいられない。 (ずっと、気付かなきゃよかった。) 気付きたくなかった。 成長など、しなければよかった。 この、絶望的なまでの距離に気付くぐらいなら。 今や綱吉はボンゴレファミリーの長で、 片やランボは弱小ファミリーの三流ヒットマン。 もう、昔のようには一緒に居られない。 (俺は、守護者だからツナの側にいられる) 泣きたかった。 綱吉の側にいられるのはとても嬉しいけど、 自分の力不足がどうしようもなく恥ずかしくて悲しかった。 他の守護者はそれぞれとても立派で、強くて、有能で。 あの人達と並んで遜色がないとは間違っても言えない。 彼の役に立ちたかった。 彼を守りたかった。 彼が大好きで。 (ツナ) 少し前に直した呼び方。 もうその愛称をランボが口にするのは許されないけれど、せめて心の中でだけは。 (………弱いなぁ俺) あ、と思ったときには涙が滲んでいて。 鼻の奥がツンとして目に熱が溜まっていく。 涙はポロポロ止まらない。 「うっ、…ぐすっ…ぅ」 (ツナ) 「ランボ?」 耳に優しいその声に振り返ると、そこには綱吉が立っていて。 「っ、…ツナぁああぁぁぁっ」 ランボは思わず、綱吉に泣き付いてしまった。 綱吉は苦笑しながらランボを抱き締め、優しく頭を撫でてくれた。 顔を埋めた首筋からは昔と変わらない懐かしい日向に似たにおいがした。 「ラぁンボ?何泣いてるの?」 「うっ、…ひっ、ぐすっ、」 ランボは答えられなかった。 本当に、情けなくて恥ずかしくて。 ぐすぐす泣いて答えないランボに、綱吉はもう一度ゆっくり頭を撫でた。あやすように背中を叩いて。 「ランボ、何で泣いてるのかは知らないけど、はやく笑って?俺、ランボがちっちゃいときからお前の笑顔が好きなんだ」 服越しに綱吉の体温が伝わってきて、嬉しいはずなのに切なくて。 「ランボの笑顔って、なんか元気になるんだよね」 そんな一言に胸がいっぱいになる。 ランボは、綱吉に縋りついたまま必死に頷いた。 (いつか、きっとツナに相応しい守護者に) 十年後☆愛様に提出 [*前へ][次へ#] |