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空の深海 (ワンピ/ロール)







空を泳ぐ夜色の魚


のったりと重く泳いだ尾びれが、月に透かされて薄墨色に変わる。




魚は気紛れに空に上がり、ゆらゆらと夜空を巡っては消えていくのだ。



ザアザアと潮騒。

月に揺すられる巨大なゆりかごの上、船は漂う。




「旨そうだな」




何の感慨もなく呟いたのは麦わらで、

トラファルガーはそれに頷いた。


「そうだな、捕まえられたらの話だ」


「捕まんねぇかな」

「捕まらないだろ」

「そうか」




甲板に座り込んだ麦わらが、首を更に反らして魚の動きを追った。



風が渡る。


「雨が来るな」

「わかんのか」

「まぁな」



トラファルガーも凭れていた身体を少しずらす。

魚の口が、月に迫っていた。




「あ、」




「アイツ、飲んじまった」

「そうだな」

「月も旨そう」

「そうか」



飲み込まれた月が、魚の腹をより白く照らす。


「お前は食い気ばっかりだな」

「そーか?」

「そうだろ」

「そっか!」




ポツ、
水滴が頬で弾けた。



「あぁ、降ってきたな」

「おー」

「中入るか」

「アイツもいなくなっちまったしな」


その言葉に空を仰げば、確かに魚は消えていた。
今はただ、昏い雲が覆うだけ。


「そういうモノだからな」


戯れのように撫でた黒髪は、既にしっとりと濡れていた。








(ある、夜の話)














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あきゅろす。
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