彩葉様より相互記念 (APH/独伊) 窓から差し込む夕日が、白い廊下を朱く染める。 ドイツはいつも、歩くのが遅い俺に歩調を合わせてゆっくりと歩いてくれる。それは不器用なドイツなりの精一杯の優しさで。俺はそれを何よりも嬉しく思うのだ。 そっと隣を盗み見ると、ちょうどこちらに目を向けたドイツと目が合った。俺が驚いて呆けてると、ドイツは真っ赤にした顔をばっと逸らした。思わず緩んでしまった口元をごまかすように、ドイツ、と彼の名前を呼んだ。 俺が立ち止まると、ドイツも足を止める。 「…何だ?」 「ねぇ、手繋ごうよ!」 「…………は?」 思い付いたことをそのまま口に出したら、赤い顔が俺を見た。きっとドイツのことだから、こんな公衆の面前で手なんか繋げないとか考えているんだろう。確かにここは学校だけど、放課後で人も少ないんだからそんなこと気にしなくてもいいのに。 何だか腹が立ったから、俯いてわざと泣きそうな声を出した。 「えー……嫌なの?」 「い、嫌なわけではない……だから泣くな、イタリア」 あからさまに動揺した気配が伝わった。ドイツは俺の泣き顔に弱い。それを知って利用している俺は、ちょっと卑怯かもしれない。 「それじゃあ、いいよね!」 返事を聞く前に、俺は素早くドイツの手に自分の指を絡めた。ドイツはそれを見て呆れたように溜め息をついたけれど、俺の手を振りほどこうとはしない。 ドイツは、俺に甘いのだ。 「…仕方ない、寮に着くまでだからな」 「了解であります!」 びしっと敬礼したら、「敬礼は右手だ」なんてドイツは言った。そんなこと言われても、今、俺の右手は塞がってるのに。 一秒でも長くこうしていたくて、さっきよりも更に遅いペースで歩き出す。今度はドイツも何も言わずに俺の手を握り返してくれた。 やっぱり、ドイツは優しい。 (…大好きだよ、ドイツ) 繋いだ掌から、少しでも俺の気持ちが伝わればいいのに。 [*前へ] |