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青葡萄炭酸 (松慶)


現パロ








顔と、財力と、セックス。

あの人のいいところなんて それだけ。





そう言ったら、憐れむような目で見られた。

「Ha、お前、何でそんなヤツと付き合ってんだ?」
「政宗はいいよね。小十郎さんは優しい大人で」

松永は、優しくない。

どちらかと言えばひどい大人で、嫌な男だ。


自分の質問をまるっと無視してみせた慶次を政宗は半眼で睨んだ。

慶次はアイスティー越しに自分の爪を見る。
少し歪な慶次の爪。
何度か割れて、そのままにしたから。




あの人の爪は、キレイ。

「あ、もう一つあった」
「あ?」
「爪。松永さんの爪、びっくりするぐらいきれいなんだよ」
「――爪がきれいで何かいいことあんのかよ」

慶次は肩をすくめる。

「セックスは上手いよ」

何のてらいもなくそう言う慶次に、政宗はげっそりと視線を外した。




ちょっと顔がよくて、お金持ちで、セックスの上手い、いやな大人。



頬杖をつく政宗の手首で、銀の腕時計が光った。
時間に無頓着な政宗へ、恋人の小十郎からのプレゼント。

(いいな)

その時計が、慶次に21時35分を教えてくれた。

「政宗、じかん」

予め宣言された帰宅予定時間は21時30分だ。
政宗が時計を見てげっと声を上げる。


悪いと断ってあの年上の恋人に電話をかける政宗を慶次は見ていた。

きっと、小十郎は向かえに来てくれるんだろう。
小十郎は優しい男だから。


この世は、優しい男が優しくない人に合せるように出来ている。



だから。

「俺も帰るよ」
「あぁ、See you」

「またね」



慶次はこれから、夜の山手線に乗って帰るのだ。

あの、ちょっと顔のいいお金持ちでセックスの上手い、悪い大人の元に。



(松永さんまだ会社かな)


夏の生暖かい風に慶次のポニーテールがふわりと揺れた。











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