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15:39 (1827)



パッと、時計は瞬きの間に表示を0から1に変えた。
赤く光る数字。

「――そういえば、ヒバリさんが使ってる時計ってデジタル時計ばっかりですね」
綱吉が雲雀を振り向けば、彼は書類に目を落としたまま答える。
「アナログ表示は嫌いなんだよ。見てすぐ何分か分からないから」

風紀委員として日々精力的に働く雲雀は忙しそうだ。
綱吉が来ても大体は何かの書類を捌いている。
いま綱吉が飲んでいる紅茶を淹れてくれたのは草壁だ。
実直で気のいい副委員長は、綱吉がこうして応接室を訪れることをどう考えているのだろうか。

「意外ですね」
「何が」
授業中だろうとお構いなしに校内を闊歩している人だ。
「ヒバリさんって、時間に縛られない人なのかと思ってました」
「時間に無頓着なのと時間を気にしないのは違うでしょ」
「はは」
さわさわと、午後の日差しが揺れた。


雲雀が書類を一纏めにする。
「お仕事、終わったんですか?」
「うん。今のところね」
優雅な所作で近寄ってくる雲雀を、綱吉は気の抜けきった笑顔で迎えた。

「それに―――」
「それに?」
ぎしりとソファが軋む。
雲雀の体重の分綱吉の目線がほんの少し下がった。
「僕はあの針の音が嫌いなんだ」
くるりと綱吉の視界が反転する。
見上げた先にあったのは、遠くの天井と、雲雀の顔。
細い顎のラインを見つめながら、綱吉はくすくすと笑った。

「時計の針の音が嫌だなんて、ヒバリさん子供みたいですよ」
「違うよ。バカな子」

細い指が器用にシャツのボタンをはずしていく。
素直にすごいなぁと思う。前に綱吉も雲雀のシャツを開けようとしたが、バカみたいにもたついた。

視界の隅に赤い光が写る。
15:39。
ああ、もうそんな時間。
ボケッと時計を見ていたら、夜色の布に遮られた。

視線を移すと、学ランを時計に投げた雲雀が黒曜の瞳で綱吉を見下ろしていて。

「こういうことをするのに、無粋でしょ」

針の音なんて、現実的すぎて好きじゃない。
そう言った雲雀を、思っていたよりロマンチストだったんですね、と。
言う前に綱吉のすべらかな額にキスが一つ落とされた。








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