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WiLL-o-the-Wisp (地球/トニジョミ)






どこまでも続く星の海
見渡せば漆黒
目指す先は遥かに遠く
まるで彷徨う迷子のよう



ポゥ…と淡い光が船内に漂う。
ジョミーは静かにそれを見つめた。

今日はハロウィンパーティーだ。
刺激の少いこの船内で思い出したように行われる数少ない年中行事。
少し前までは大喜びで参加していたナスカチルドレン達が、今は嘲笑して眺めているのには苦笑した。

サイオン波で浮かぶカボチャのランタン。
それぞれにユニークな顔がこちらに笑いかけている。
「グランパっ!」
その視界の中に突然トォニイが現われた。

「こんな所にいたの?僕ずっとグランパのこと探してたのに」
「あぁ……」

気のない返事を返すジョミーはトォニイに背を向けじっと星を見詰めていた。
この美しい白い船は、何十年も何百年もこの星々の間を渡ってきた。
微かな希望を目指して。

「グランパが展望室にいるのは珍しいよね。あぁ、あのバカ騒ぎから逃げて来たの?下はほんとに五月蠅くて」

トォニイがとりとめもなく話す。ジョミーが自分を見ていないのは大した問題ではないらしい。
それはまるで幼子が母親に今日あった出来事を話すように。

「こんな所にまでこのカボチャあるんだ。一体いくつ仕込んだんだろうね?」
「トォニイ」
「何?グランパ」
ジョミーの呼び掛けにトォニイの顔がぱっと輝いた。

「このランタンの起源を知ってるか?」
「え?」

カボチャランタンはウィル・オ・ウィスプを表しているのだという。
ウィルは聖ペテロを騙した嘘つき男。
聖人を騙した罪人は天国にも地獄にも行けず、永久に現世を彷徨うことになったという。
ウィルを哀れんだ悪魔は燃えさしの炭を一つ彼に明かりとして与えてやったそうだ。
その光が現世に現れ鬼火となった。
鬼火はウィルの彷徨う証なのだという。

「嘘つきウィル、でしょう?昔グランパが聞かせてくれた」
「似ていると思わないか?」
「何と?」

「ミュウと」

ポゥ…と光るカボチャのランタン。
寄る辺なく彷徨うウィルは一体どこに行きたかった?天国?地獄?
永遠の孤独の中で、彼は何処を目指しているのだろう。

「グランパ……」
ジョミーの碧色の瞳は、ただ暗闇に瞬く星を映していた。




どこまでも続く星の海
見渡せば漆黒
目指す先は遥かに遠く
安住の地は未だ見えない








08 ハロウィン記念


鬼火のことを英語ではウィル・オ・ザ・ウィスプって言うんだそうです。
カボチャランタンは正確にはジャックランタンで、厳密にはちょっと違うんですが。

悪魔からの炭を元にウィルはカブでランタンを作ったのに、ハロウィンの風習がアメリカに渡ったときにそれがカボチャになったらいしです。

ウィルことウィリアムさんは一回死んだときに聖ペテロさんを騙して生き返ったんですって。
なので二回目に死んだときにペテロさんに追い返されちゃうのです。
これには説得したというのと嘘をついて騙したというのがあるんですが、まぁ騙した方が罪人ぽいなと思いまして。


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