逆言遊び瀬戸内編
「なぁ元就」
「………………………何だ」
「ちょっと遊ばね?」
そう言ったら、案の定射殺されそうな目で睨まれた。
「我は貴様などと戯れる気もなければそのような時間もない。即刻帰れ。」
「政宗がやってみろっつうんだけどさ。ただ思ったことと反対のこと言うだけなんだと。軍師サマにゃ簡単だろ?」
聞きゃあしない。
「下種が……そなたの耳は飾りか。」
元就の眉間の皺が増えていく。
秀麗な顔に浮かぶ侮蔑は、思わず怯んでしまいそうだった。
だが、残念ながら鬼を自称する男には微塵も効果がない。
帰るどころか近寄ってて、元就の顎を掴んだ。
強制的に向けられた視線の先には精悍で野生的な男の顔。
「やろうぜ、元就」
「っ、気安く我の名を呼ぶなっ!!」
にやり、と。
鬼が笑った。
「呼ぶな、な」
不穏な笑みに、本能が警告する。
「元就」
薄い唇が、熱い吐息で名前を呼ぶ。
「元就 元就 元就」
その声に抱きすくめられたように動けない元就に、元親が身を寄せる。
「元就」
肩に、硬い手が置かれた。
吐息が、首筋にかかる。
「元就」
「〜〜〜〜〜〜〜っ!!」
「がっ!!?」
凄まじい勢いで立ち上がった元就の膝が元親のみぞおちに入った。
痛みに蹲る元親に、元就が凛とした声で言い放つ。
「死ねっ長曾我部元親!!三度死ねっ!!」
元就はそのまま憤然と出て行く。
残された元親は低く笑う。
身を翻す元就の目尻が、そうと分るほどに赤らんでいた。
(可愛いったらねぇな)
君が素直じゃないなんて知ってる
最初は離して欲しくて世界で一番愛してるとか言う予定だったのに。
不思議なこともあるもんだ。
逆言遊び特に関係ない件
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