[携帯モード] [URL送信]
Their joyful story (27+18)

ある5人の五題by不在証明

01 残酷なひと





彼はどんな人物かと聞かれれば、間違いなく「残酷な人間」と答えただろう。


「……ねぇ、雲雀さん」
「……………何」
「俺ってそんなに酷いですか?」
「とってもね。」

間髪を入れず返ってきた答えに、綱吉はわざとらしく肩を竦めた。
その反応がひどく癇に触る。

一体、いつからこんな風になったのか。

今の綱吉に、中学生のときのあの草食動物らしさはない。
優しげな瞳には喰えない老獪さが光り、口元は緩く笑みを浮かべて本心が見えない。

この不毛な空気に嫌気が差た雲雀は無言のまま踵を返し、部屋を出て行こうとする。
綱吉はその背中に声を掛けた。

「雲雀さん」
「何」

「愛してますよ」

空を切る音が響くと同時に、綱吉の首に冷たい金属が当たる。
トンファーを振った雲雀が射殺さんばかりの鋭さで綱吉を睨み付けた。

「…それ以上言うと……噛み殺すよ。」
「どうして?」

愛は本気なのに、心外だと言うように綱吉目を見張る。
その琥珀の奥で面白がるような色がある。
雲雀の視線の鋭さが増す。

「………僕を愛してるって?」
「えぇ」

何の衒いもなく綱吉はそう言い切った。
雲雀は更に眉を吊り上げる。

この、男は。

「じゃあ、ファミリーは?」
「愛してますよ」

綱吉は、とてもあたたかな微笑みを浮かべていた。
究極の慈愛、永遠の父性
この微笑みに心酔している人間を何人も知っている。

「ボンゴレは」
「だいっきらい」

優しい微笑みのまま綱吉はそう断じた。

綱吉は、ファミリーは愛せてもボンゴレという組織は愛せない。
憎んですらいるだろう。

けど

「……君が死ぬ以外にボンゴレを救えない、なんてことになったら君は死にに行くんだろう。」


綱吉はただ綺麗に微笑んだまま。



雲雀は鼻をならして踵を返す。


これだから、残酷だと言うのだ。



「やっぱり君って酷いよね」



愛してると言いながら、その愛ごと簡単に死んでみせる。


雲雀が部屋を出て行くのを、綱吉は微笑んだまま見送っていた。


















[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!