拍手 (菊ちゃんハピバ)
「ドイツードイツー」
「どうしたイタリア?」
「知ってたー?明日は日本の誕生日なんだってー」
「何だそんなことか知っているに決まって」
ガシャーンっ!!
轟音に振り返ると、そこには粉々になったグラスが落ちていた。
「あ、ギリシャ」
蒼い顔で呆然と立ち尽くしているギリシャの前で、イタリアが手を振る。
しかしギリシャはまったくの無反応。
「ギリシャー?おーい」
「一体どうしたんだギリシャ」
「…誕生日なの……?」
熱にうかされたような声が、ポツリとこぼれた。
「え?あ、そうだよー2月11日は日本の誕生日!」
イタリアはまるで自分のことのように満面笑顔でそう言った。
「………………」
ギリシャが、幽鬼も裸足で逃げるような足取りで去っていく。
「えっギリシャー?」
「何だったんだろ?」
「さぁな。あんまり動くなイタリア。危ないから。俺がガラスを片付けるまで待て」
ショックに打ちひしがれたギリシャは、ふらふら当ても無く歩いていた。
(誕生日……知らなかった…)
日本の誕生日を知らなかった。
当然、何の用意もしていない。
「日本…」
大好きな人の一番『特別』な日を知らなかった自分も、何の用意もしていない自分が、情けなくて嫌だった。
「あっ、おい日本っ」
日本という言葉と、大嫌いなトルコの声に足が止まる。
見ると、そこには確かに日本とトルコがいた。
むっとして、二人を引き離そうと近付く。
「その、つまんねぇモンなんだけどよ。よかったら貰ってくれねぇか?」「は?はぁ」
「すまねぇな。本当は明日直接渡してぇんだけど、予定があってな」
「あ、あぁ!私の誕生日ですね」
ギリシャはそっと踵を返した。
ギリシャは、大の字になって空を眺めた。
トルコが誕生日を知っていたことにショック倍増だ。
雲がゆっくり流れる。
「ギリシャさん?」
「!」
日本が覗きこんできた。
「どうしたんですか?」
「……何が?」
「さっき、トルコさんとの話を聞いてらしたでしょう?トルコさんに石が投げ付けられたので。」
無意識のうちにトルコを攻撃したらしい。
顔を見せないギリシャを日本が心配して追いかけてくれたんだろう。
「ごめんね。日本」
「えっな、何がですか?」
「日本の誕生日……知らなかったから。何も用意して無い」
肩を落として、それが重罪であるかのように告げたギリシャ。
日本はギリシャをきょとんとした目で見ていた。
次いで、笑う。
「いいんですよそんなこと。皆さんのその気持ちだけで十分ですから」
ギリシャはそっと手を伸ばした。
「わっ、ちょ、ぅわっ!!」
ぎゅぅーと抱き締められて、日本は慌てる。
「明日までに、日本がびっくりするようなもの、用意する」
「えっ!?だ、だから大丈夫ですからっ」
「あぁぁっ!てめぇギリシャっ!何してんだっ!」
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