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幻術の届かない楽園 (mam27)


「何やってるのソレ」

ボンゴレ本邸の屋上で、スーツを着た細い背中をみつけた。
「紙ヒコーキ知らない?こうやって飛ばすの」
すぅっと華奢な玩具が白い残像をのこして滑空する。
進む先には痛いほどの青。
「そのぐらい知ってるよ。なんでそんなことやってるのさ」

高いところから飛ばしているせいか、紙飛行機はなかなか墜落しない。
青い空に白い稜線がのびていく。

「ツナヨシ」

奔放に跳ねる蜂蜜いろの髪が風に揺れる。

壁も天井も無い屋外は解放感に満ちているけど、その分綱吉の肩の薄さや、うなじの白さ、そんなものを強調した。


「マーモンは?なんでこんなとこ来たの?」
「どっかのボスが執務室にいないからだよ」
不機嫌に言って、マーモンは持っていた書類を差し出す。
綱吉はそれを見てわざとらしく目を見張った。
「ヴァリアーって意外と仕事熱心だよね」

少なくとも嫌々マフィア稼業をしている綱吉よりは遥かに仕事熱心だろう。全員好きで独立暗殺部隊ヴァリアーにいるのだから。


「部下が仕事熱心でもトップが紙飛行機で仕事サボってるようじゃね」
マーモンの皮肉に綱吉が薄く笑った。


「そらがね、綺麗だったんだ」

綱吉の視線は手元の紙飛行機から動かない。
細い指が器用に動いて紙飛行機を折っていく。
「そうしたら、あーなんか飛べそうだなーっておもってね」

オーソドックスな紙飛行機はすぐに出来上がり、綱吉は躊躇いなくそれを大空に放った。
真っ白な紙飛行機が飛んでいく。


「ね」


マーモンを見上げて綱吉が笑った。
マーモンは、その笑顔を見つめた。

(ねぇ、ツナヨシそれってさ)

そこから先は敢えて言葉にしなかった。
全ての表情をフードに隠し、口調だけはいつものもので。


「そんなに飛びたいなら、僕が飛ばしてあげるよ。Sランク三つ分の報酬でね」
「あはは、そんなに高いんじゃムリかな」
嘘だ。
幻術ぐらいいつでもタダで使ってあげる。それに、綱吉がそれを本当に望むなら、X バーナーで飛べるだろう。


君が本当に望むなら、現実よりリアルに飛ばしてあげる。
(けど、君が本当にやりたいのは違う事でしょう?)


君は、飛んで行きたいんじゃない。

君は、ここではないどこかへ行きたいんだ。










マフィアのボスが嫌々なツナさんと、ツナさん大好きマーモン。
よくわからないことに。


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あきゅろす。
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