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溺愛する薔薇 (APH/仏英)






「ふ〜ふふ〜ん♪ふっふっふぅ〜ん♪」
口笛に合わせてリズミカルに鋏を入れていく。
ぱちんぱちんと小気味いい音を立てて蕾や葉が落ちる。

「ふんふんふ〜ん♪」
リズムに乗って、一回転。そしてそのままポージング!!


「…………何やってんだお前…」

美の極地に到達しようとしている背中に、軽蔑しきった声が掛けられた。
「おーイギリスー。何してんだお前」
「やめろ寄るな触るな近寄るなぁぁっ!!」
イギリスの反応は、毛虫を毛嫌いする少女の反応そっくりだ。
「何だよお前自分から来たくせに」
「こっちが聞きたい!!何やってんだお前!」
フランスはさらりと髪をかきあげ、睦言を囁くように言った。

「――愛の体現?」
「アホか―――――!」
ぞわぞわと鳥肌を立てたイギリスが、その勢いのままフランスを殴り飛ばす。

「あ、」

フランスが、薔薇の生け垣に突っ込んだ。
茨の方に殴ってしまったイギリスも蒼くなる。
「大丈夫かフランス!?」
「いってー」
「………あ…?」

むくりと起き上がったフランスの顔は、ほぼ無傷だった。

ブツブツ文句を言うフランスを無視して、茨を覗き込む。
「…棘が、ない?」
「当然だろ。抜いてるんだから」
「抜いてる?」
テニスコート四面ぐらいはありそうな薔薇園を見回して、呆然とする。

「そりゃ、俺にとって大事なバラだし?」
その言葉に、フランスが薔薇と共にしでかしたアレやらコレを思い出して頭が痛くなった。


「それに」
「あぁ!?」
「大事な人にあげるもんだし。傷つけたらやだろ?」

イギリスが固まった。
「は?」
「もうすぐバレンタインだろー?大事な人には、ここのバラで花束作って贈ってるんたよお兄さんは」

愛に生きると公言しているフランスのばら蒔くバラのことだ。
何かやっているとは思ったが、まさか自分でバラの花束を作っていたとは。


「……まぁ、大事な人を傷つけたくないってのは同感だな」
「あ、そういえばお前何しに来たワケ?」
「………ほら」
イギリスが、鞄の中から小振りな可愛い箱を取り出す。
それにフランス雷に打たれたような顔で後ずさった。
「えっ、お前…俺にバレン」
「んなわけあるかぁっ!!リヒテンシュタインからだっ」
「え?お嬢ちゃん?何でイギリスが持ってくんの?」

リヒテンシュタインからと聞いてフランスは素直に箱を受け取った。

「………お前スイスの危険人物リストに入ってるんだろ…」
過保護なスイスから、手渡しする相手を指定されてしまったと、リヒテンシュタインは困ったように笑っていた。

「俺だってお前の所になんて来たくなかったけどな!レディの頼みだし仕方ないだろ!!」
まさかあの子の頼みを無下にする訳にはいかない。

「返礼用意してくるからちょっと待ってろ」
「おう」

部屋に戻ろうとするフランスの目に、剪定で落した蕾が映った。

「なぁイギリス」
「あ?」

「これで花束作って贈ってやろうか?」



フランスの頬に、真っ赤になったイギリスの拳がめり込んだ。











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