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黒猫に甘噛み (HH/ヒソイル) 音葉様へ



レコードの低音が部屋に広がる。
甘い歌詞を女が唄い上げていく。


膝にのし掛かったイルミの、まっすぐ胸元まで伸びた髪を一房、ヒソカがつまんだ。
つやつやとした、しなやかな黒髪。
ヒソカはそれを指先に巻き付けて遊ぶ。
「女のコみたいな髪だよネ◆」
「うん、お手入れに気を遣ってるからね」
イルミは表情一つ変えずにそう返した。

ヒソカが嬉々としてイルミの黒髪を弄ぶように、イルミは黙々とヒソカの髪をセットしていく。

「ウソばっかり☆」
「うん、まあウソだけど」

カランと溶けた氷がグラスの中で澄んだ音を立てる。
悪酔いしそうな甘い酒。

ヒソカは猫がじゃれつくのを放っておくように、イルミの好きにさせていた。

「ボクの髪をいじるのは君ぐらいだよ…♪」
「うん だろうね」
ピーッピーッという野暮ったい電子音が響いた。
「あ、時間だ」
イルミはすくっと立ち上がり、背もたれの上で逆立ち。後ろに倒れる要領でソファの向こうへ着地。
「じゃあオレ行くから」
「バイバイ◆」
ふくろうのように首だけを回し、イルミが無表情のまま別れを告げる。
ヒソカは笑って手を振った。

扉に向かってスタスタと歩くイルミの足がいきなり止まる。

「あ、そうそう」
「ん?★」
「ヒソカの首筋に、ひたりと冷たいものが当たる。
押しつ当てられたそれの、薄く鋭い感触。

「オレの居ない間に浮気なんてしたら許さないからね」

イルミの声にも表情にも、一片の激情はない。
ただ、首に当たるイルミの針だけが冷たく。

「うん わかってるよ◆」
「ならいいよ」
気配もさせずに針が引く。

「じゃあねヒソカ」
「うん♪」






女の歌声だけが音として部屋に響く。
ヒソカが首筋を撫ぜると、指先が濡れた。
赤く染まった指先を見て、ヒソカは笑った。

「釘、刺されちゃった◆」













音葉さんお誕生日おめでとー




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