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意地っ張りクライベイビー (APH/仏英)



「はぁ?独立?」

頷くアメリカの顔は真剣だった。
横に置かれたマスケット銃がやけに生々しく感じられた。

「…泣くぞ、アイツ」
言ってから、あぁ、きっと本当に泣くんだろうなと思って眉をしかめた。









「……怒ってるのか?」
窓枠に凭れるように座ったイギリスはじっと外を見ていた。

いつもきちんと着ている洋服の襟元が乱れてている。
日に焼けていない白い首筋が、鮮烈なのに弱々しい。

怒っていればいいと思った。怒っているなら、それはイギリスが元気な証拠だから。
この分ではダメそうだ。
前で力なく垂れた腕。その手の中に、手作りの兵隊人形があるのを知っている。


「イーギリスっ」

返事はない。
フランスは溜め息をついて、床に散らばった物を拾い集めていく。

本、カップ、ブーツ、ジャケット、アスコットタイ

「おっ前なぁ、こうやって散らかすのやめろよ。片付ける方の身にもなっ」
頬に衝撃。
骨と骨がぶつかる音がした。

「いっ、てぇ…っ!」

頬を押さえて睨み返すと、肩で息をするイギリスの緑色の瞳とぶつかった。
(あ、ヤバ)
見なければよかった。

こんな、傷ついた目


「ふっ、ふざけんなよてめぇ……っ!!ケンカ売るのもいい加減にしろっ!」

痛む頬を抱えながらも、イギリスの震える拳に血が滲むのも時間の問題だろうなと冷静に思った。

「アメリカに味方しておいてよく俺の前に顔を出せたなっ!お前のせいで…っ!」

悲痛な声を背中に受けながら、フランスは拾い集めた物を机に置いた。
怒ればいいとは思ったが、こんな風に怒って欲しかった訳じゃない。


「俺は別に、アメリカに味方した訳じゃないぜ?」
「言い訳かよ!?」
「言い訳じゃなくてさ。俺は、アメリカに味方したんじゃない。アメリカと一緒にお前を倒したかったんじゃない」

見返してくる緑の瞳が、怒りより傷ついた色を湛えているのが切なかった。

「俺は、自由を求める心に味方したんだ」

自分が間違ったことをしたつもりはない。
フランスは、革命で王政を廃した。今のフランスは圧政に屈しない国民でできている。


「自由……?」
イギリスは嘲笑するようにそう言った。
フランスにはその顔は泣くのを我慢しているようにしか見えないけど。

イギリスの疲れ切った溜め息が痛い。
イギリスはそのままズルズルと床に座り込んだ。まるで全てを投げ出すように。


「………帰れよ」
「帰らない」
「帰れっ!!」

「帰らないって。―――お前が泣くまで」

「誰っが、泣くか!!」
「泣けよ」


へたりこんだイギリスと背中合わせにフランスも座る。
イギリスが潰れないぐらい。でも、俯いてしまうぐらいに体重をかける。

「泣けよ。お前、大好きだったじゃん」

沈黙が部屋中に広がる頃、イギリスの肩が大きく揺れて、押し殺した嗚咽が聞こえた。
フランスは気付かれないようにそっと微笑んだ。
ふと、指先に何かが触れる。
イギリスが握っていた兵士の人形。昔アメリカに贈ったものだ。
木製のそれを拾い上げ、弄ぶ。
この人形を一体一体、イギリスが作ったのを知っている。

(愛だね)

後悔はしていない。
そんなダサいことはしない主義だ。

それでも、あったかもしれない平和的解決法を考えてみた。
イギリスがこんな風には泣かなかったかもしれない道を。

(でも、結局泣くんだろうな)

フランスは一つ苦笑して、少し余計に体重をかけてみた。


仕方ない。イギリスはそういう奴なのだから。
















はい、今回は仏英のリクエストを頂きました。
プレゼントフォー彩葉さん



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