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隣のS様 5 (27+白+正)


5.殺したいくらい愛してるせいで今にも手が滑りそうだ








「ツ〜ナヨ〜シくーん」
「あぁ。なに白蘭来てたの」
「もーつれないなぁっ!」

いきなりボンゴレファミリーの執務室に現われた白蘭を一瞥すると、綱吉はすぐ視線を書類に戻した。
そんなそっけない態度でも白蘭は構わないらしい。
ニコニコとご機嫌笑顔の白蘭の後ろには憔悴しきった顔の正一がいた。

「また正一いじめて来たの?」
「ちゃんと正チャンが行っていいよって」
「あんたボンゴレに行きたいって言い出したら許可出すまで仕事サボるわパワハラするわで役に立たないからでしょうがーっ!!」

叫んだ後、正一はまた胃が痛み出したらしくアタタタと言って蹲った。
綱吉はそんな苦労性の補佐役を生温い目で見守る。

ふと思い付いて、綱吉はごそごそと引き出しを探り、ブドウ味のキャンディを取り出してそれを正一に手渡す。

「頑張れ、正一。俺はお前を応援する」
「ボンゴレ…」
ミルフィオーレの中でも滅多にない労りに、正一の目尻に涙が浮かぶ。
「えーっ!正チャンずるいーっ」

せっかく一瞬消えた胃痛が白蘭の一言で復活した。
また苦しみ出した正一に、綱吉は元凶を叱る。

「コラ白蘭!お前みたいなのに付き合って正一は大変なんだから!ちゃんと部下には愛を持って接しなさい!」
「えぇー?ボクちゃんとみんな愛してるよー?」

あまりにも子供っぽい言い方に正一は頭痛までし出した。

「そういう綱吉クンはボクに愛を持って接してるの?」

うっわ……っ!
爆弾発言の投下に正一の頬が攣つる。
恐る恐る綱吉を盗み見ると、顔にはヤブヘビと書いてあった。
率直な忌々しさは正一にも覚えのあるものだった。

「…………それこそ心外だ。ちゃんと愛ある対応をしてるだろう?」
「そう?」

「あぁ。殺したいくらい愛してるせいで今にも手が滑りそうだ」

棒読みだった。
絵に描いたような作り笑いだった。
それなのに白蘭は最高級の愛の言葉をもらったかのように微笑んだ。

二人共笑顔なのに何でこんなに空気が殺伐としてるのか。



入江正一現在の諸症状
胃痛、頭痛に加え、心痛





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とりあえずS様シリーズ終了



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あきゅろす。
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