その涙の在り処 (APH/普洪)
ひどいことを言われた。
そして、
ひどいことを言った。
立ち止まっちゃだめだ。
動かせ動かせ。攻め立てられるように進んだ。
でも一度鈍ってしまうともうだめで。
あっけなく涙の堤防は決壊した。
みっともない。
食いしばった歯が痛い。
それでも嗚咽を漏らすことは許せなっかった。
ちゃちで情けない自尊心。
「なぁ」
「―はなしっ、かけない、でっ!」
背中にかかる声。
一番聞きたくない声。
大きらい。
「――悪かったよ。」
違う。
本当に悪かったのは私。
こいつが聞き入れる必要のないわがままを言った。本当に、ただの、横暴なまでのわがまま。
それを断ったこいつと売り言葉に買い言葉エスカレートして、お互いを傷つけるための言葉を選んだ。
それに私が勝手に傷ついただけの、それだけの、
くだらないよ薄っぺらいよ。
どこまでも自分本位な涙も、
女の涙にあっけなくほだされるこの男も、
この関係も、
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