[携帯モード] [URL送信]
砕くことは容易く、 (drr/臨波)





「ねぇ浪江、お茶いれてよ」
デスクチェアにふんぞる臨也を一瞥した浪江は無言のまま席を立ち、淹れてきたコーヒーを無言のまま置いて踵を返す。
すっと伸びた背筋を見送りながら呟いた。


「可愛くない女」










夜の明かりが割れた窓から入ってきた。
室内は嵐にあったかのようにめちゃめちゃになっている。臨也は他人事で面白がるだけだが。ここの住人はきっともう住めないだろう、ご愁傷さま。
床に散乱したガラスが光をのみこんでキラリと反射する。
目障りで、臨也の靴がまたそれを踏み潰す。
カシャンと細い音がした。
靴裏にざりざりした感触を感じつつ、波江のことを思い出した。
かわいげのない女。
臨也は哄笑する。
冷たく固いものも、こうしてあっけなく砕けるのだ。







そして、砕くことはあっけないほど簡単なのだ。












「波江?」

自分のマンションに戻ると、やけに静かだった。
部屋を見て回ると、波江はソファで寝ていた。

「お昼寝?いい御身分だね」

にやにやとした笑みを浮かべ、ソファとテーブルの間の床に腰を下した。

白いワイシャツが呼吸に合わせて上下する。
その上にのった手首がやたらと華奢に見えたので、なんとなく握ってしまった。


「…ぬくい」





波江の寝顔は普段からは想像もできないような穏やかなものだった。














[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!