蝶々(三成+吉継) 刑部が、蝶を飼っていたことがあった。 文机の上の一輪挿し、その枝に一匹の幼虫を置いて。 何をしていると尋ねると、ただ気まぐれよと言って笑った。 枝についた葉は無残にも食い荒らされていた。 俺はそれがなんとなく許せなかったので、気付いたときには庭に出て枝を切って代えた。 枝から移す時ついでに虫に文句を言っておいた。 ある日虫はいなくなった。 どうしたのだと聞くと、包帯で巻かれた指が枝を指差した。 虫はさなぎになっていた。 蛹をはがして枝を入れ替えるわけにはいかず、 しばらく一輪挿しは枯れた枝が占領した。 刑部が枯れ枝の横でなんでもないように書きつけるのを見て、俺はやっぱり不快で蛹を早く出てこいと脅しつけた。 蛹は中でどうなっているのだと穴熊に聞いた。 お前さん知らねェのか。幼虫はサナギの中でドロッドロになって体を作り直してるんだよ 不敬な物言いだったので斬滅しておいた。 蛹の中は液状らしい。知っていたか刑部。 ある日蛹はいなくなった。 枯れ枝には裂けた蛹が残っていた。 どこへ行ったのだと聞くと、知らぬナァと返された。 恩知らずな奴だ。 [*前へ][次へ#] |