きっと焼け残る (松コタ)
筋張って長い指が、大仰な箱から焼き物を取り出した。
それは白磁の酒器。
手の内で弄ぶように回しながら松永が笑う。
「白磁は、女の肌に似ている」
すべらかで、冷たく、体温が馴染みにくい。
そう言うと、見せ付けるように艶めかしく撫で上げた。
「ふっ……」
面白そうに彼が笑う様を小太郎は影のように控えてみていた。
「箱書きつきの焼き物と飯茶碗の違いがわかるかね?」
返事がこないことは百も承知のはずなのに、こうして戯れに投げかけられる問い。
松永の指が優雅に動いて、白磁が放物線を描いて
落ちた。
砕けた破片の一つを拾い上げて、松永が嗤う。
「何も、変わりはしないさ。こうしてしまえばただの土くれだ」
そして興味が失せたようにまた放り出す。
「人も同じだよ。罪人も聖人も焼けばただの骨と灰にしかならん」
白磁の破片をまたいで、松永が距離を詰めてくるのを、やはり小太郎は身じろぎもせず待つ。
「だが、私の駒がただの人では困るのでね」
黒々とした瞳が焦点のぼやけるような近さから覗き込んでくる。
顎をつかまれ、動かせない。
松永の指は体温が低い。
「二心など入る隙もないほどに、鉛でも詰めてしまおうかね」
どうせなら、
笑ったままひどいことを言うこの男の息で満たされたいとぼんやり思った。
鉈谷様からのリク。
撃 沈 ☆
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