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白い鎖赤い檻 (6927) 在様へ


捏造十年後




「拗ねてるの?」
「違います。」

憮然とした口調は誰が聞いても拗ねている以外の何物でもない。
綱吉は楽しげに笑って右手を振った。

「そんなに気にするなよ。狙撃ぐらいで」

骸はその右手に巻かれた包帯の白さを直視出来ずに目を逸した。
右手と、肩から脇腹にかけて厳重なほどに巻かれた包帯の存在を骸は知っている。

「怪我人は大人しくしていたらどうです。」
シャマルからはまだ安静を言い渡されているはずなのに、綱吉は平然と執務室で書類にサインをしている。
「冗談だろ?ただでさえ普段からたまってるのに。これ以上仕事をためるのはゴメンだよ」

普段仕事が溜まるのは偏に綱吉のヤル気が持続しないせいだ。

避けたとはいえ銃撃。あんなに動いたら傷が開くだろう。


微かな呻き声と、にぶい衝撃音、赤く染まっていく彼のスーツ。
倒れていく、彼。


目の前にいながら守れなかった自責の念は容赦なく骸を苛む。

「犯人の目星は付いたんですか」
「んー、まぁねぇ。先生のシゴキに耐えるスナイパーなんていないよ」
アルコバレーノ。確かに、あの男の拷問ほど悪趣味なものもない。

骸の意図を察したのか、綱吉が笑った。
「なに、報復?」
骸は答えない。

本当はスナイパーの方も骸が捕まえたかったが、綱吉の応急処置をしている間リボーンに持っていかれた。
あの漆黒の死神め。
骸が立ち上がろうとしたそのとき。

「骸」

名を呼ばれ、止まる。
綱吉の声が、琥珀色の瞳が、抗いがたく骸を拘束した。

「ダメだよ。骸は留守番。今回はリボーンにあげるって約束しちゃったんだ」

言いながら椅子から立ち上がった綱吉が包帯に手をかけた。
綱吉が自分の包帯を解いていく。

白 白 白。

その中に滲んだ赤を見つけて骸は息をのんだ。

綱吉が、慈愛とも呼べる笑みを浮かべながらその包帯を骸に巻き付けていく。
両手首を縛るように。

「鎖。大人しくしててね」

そう言って、綱吉は笑みを一つ残し執務室を出て行った。

執務室に一人残された骸は唇を噛む。
あの大空は時に横暴で卑怯だ。
こうすれば逆らえないと分っていて骸を置いて行く。

骸は綱吉が巻いた包帯を見つめた。
縛りつける白と、点在する赤。



―――唇に寄せた包帯からは、甘く彼の血の香りがした。









相互記念。
在様に進呈させて頂きます。


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あきゅろす。
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