わかりあえること


 雨だった。その日は朝から雨が降っていた。梅雨時季でそれが当たり前になってきたここ数日では見慣れた風景だった。

「は〜、今日も基礎トレーニングかあ……。この雨さえ降っていなけりゃ……。それにじめじめじめじめ……。梅雨は嫌いだ〜!」
「仕方ないよ、天気はどうにもできないでしょ」
「そうっすけどお……」

 部活の時間、とある部が校内に設けられている屋内練習場に集まってきた。そのうちの二人、大きい目にストレートの髪の少年の愚痴に彼の先輩であろう細目で顔には微笑を湛えている青年が答えた。

「全員集合!」

 部員が集まり四方からざわめきが広がる中、眼鏡をかけた精悍な顔つきの青年が声をあげた。

「今日も屋内練習となる。よって今日も昨日同様、二人一組で練習を行う。トレーニングメニューは……」

 大きい目にストレートの髪の少年は、彼の言葉にげんなりとした表情を浮かべた。その隣で微笑を湛えた青年はほくそ笑んだ。いつものことなのだろう。慣れた日常のワンシーン。彼は少年に向けていた視線を、精悍な顔つきの青年に戻すと真剣にメニューの話を聞いた。



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あきゅろす。
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