彼は長男

「守くんも大変ね」

 座敷の縁側に座り、外で遊ぶ弟と従兄弟を眺めていた彼は彼女に話しかけれ、声がする方に顔を向けた。座敷には他に誰もいなく、皆それぞれに違う場所で遊んでいた。彼女はゆっくりと彼の隣に座った。

「大変って、やよい姉ちゃんよりはいいよ」
「そう?」

 彼が軽く苦笑いを交えつつそう言うと、彼女は少しはにかみながら顔を傾げて見せた。

「だってやよい姉ちゃん一番上でしょ? 下の面倒を見てやらなきゃならなかったんでしょ?」
「まあね。でもそんなに大変だとは思ってなかったなあ」

 彼女は27歳とは思えない無邪気な笑顔で笑って見せた。

「下のほうって言ってもね。守くんとは年も離れているでしょう? それにほら、守くんから下の子って守くんが面倒見ていたでしょう? それから、私から守くんまでって男の子が多いじゃない? だから私が面倒見なくても自分たちで遊んでいたわ」

 彼女は懐かしそうに微笑みながら話した。彼が彼女に憧れたのもこの笑顔があったからなのかもしれない。

「そういえば守くんってテニスやっているんだよね? インターハイとか出たの?」
「ああ、うん……。確かに学校は強いけどさ、一年だから、連れて行ってもらえなかったよ」
「ふうん、そうなんだ。残念だね」

 取り留めのない、なんということもない会話だ。しかし彼にとってはどこか、いつもと同じ、普通の会話のようではない気がしていた。




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あきゅろす。
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