たいせつなもの

 シゲとは彼らの一学年下、高校二年の大田原茂範という青年のことだ。
長身で眼光は鋭く、口は悪い。先輩に対して敬語を使うことをあまりしないが、運動能力、身体能力が群を抜いていたため、先輩は皆、彼のその行動を大目に見ていた。
彼の所属する部活は名門校で、最上級生以外がレギュラーになるというのは極稀なことだが、彼はレギュラーのその地位を確かなものにしつつあった。

「……」

 彼はガタンガタンと揺れる電車の入り口に立ち、街灯や家の窓から漏れる光をぼんやりと見ていた。相変わらずその眼光は鋭いが、口元には心なしか笑みが浮かんでいる。
 彼はその電車に乗り込んでから幾つか目の駅でその電車を降りた。



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あきゅろす。
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