ふたりは
三月の中旬、梅の花が咲いていた。遠くからでもわかるほどのその美しさは都会の喧騒から浮き、それでも和やかに映えている。赤々と咲く梅の横に、申し訳なさそうに白梅もその花弁を、それでも美しく広げていた。
その梅が見えるところに彼は一人立っていた。近くには大きな校舎と、まだ咲かない桜の並木道。彼は近くの柵に寄り掛かり、目の前の美しい光景にその瞳を輝かせ、笑みを湛えていた。
「待たせたな、空哉」
と、一人の青年が、彼に近付いてきた。彼は振り返ると、
「ううん、そんなに待ってないよ、太陽」
そう返した。
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