こたつ


 冬の澄んだ空に浮かぶ輝く星々が綺麗な中、彼は家へと向かい歩いていた。吐く息は白く、その寒さに彼は顔の筋肉を緊張させる。
 住宅街のとある一軒の家のドアを開け、彼は言う。

「ただいま」

 凍てつく寒さが、その声にも表れたのか、いつもより固い声で彼は家の者に帰宅を知らせた。しかしそれに返答はなかった。いつものことだ。彼は、また父も母も姉も揃って居間でテレビでも見ているのだろうとさほど気にせずドアを閉めた。
 そこで彼は玄関に無造作に置かれた靴を誤って一つ蹴ってしまい、それに顔を向けた。いつも彼の家ではない見ない靴だった。彼の靴より少々大きい。
 彼はそれを見て少しだけ首を傾げた。しかし、それについて考えるより今は少しでも早く温まりたいと、靴を急いで脱ぎ、何事もなかったかのように居間へとその足を向けた。



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あきゅろす。
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