SPECIAL


「離せよ亘! 俺はいい!」
「そーゆーな相坂、ほら」
「離せ! 帰る!」
「そう言わずにい!」

 二人の少年が店の前でもめていた。亘と呼ばれた長身の少年と、相坂と呼ばれた茶けた髪の少年だ。

「こんばんはー! 今日のおすすめ料理ってなんすか〜?」
「亘ーっ!」


「うまいだろ?」
「……うん……」
「そんな仏頂面せずに、笑って笑って」
「恥ずかしいんだよ、亘! 声でかい……」

 相坂が少々顔を赤らめた。二人の少年は亘が相坂を引っ張って入っていった食堂で夕食をとっていた。

「いいんだよ。声が大きいのは俺のもともとのものだし、俺結構ここの常連だし」
「そんなに来てんのかよ! ったく、暇人があ……」
「バイト代のはけ口がないんだよ。それに下宿生って、家族で外食にほとんど行けないから寂しいしさあ」
「……もしかしてお前、金貯まるたび、こうやって部員引っ張って来てんの?」
「そ」

 相坂は改めてというふうに、どこか新鮮な気持ちで亘の顔を見た。大きい声を出すその口は今、その食堂のご飯で一杯だ。

「……オレ遠方組なんだけど……親ご飯作って待ってんだけど……」
「そお? じゃ、親にお土産持っていけよ! すみませーん! 栗ご飯お持ち帰りでー!」
「え?! 亘ーっ?!」


 二人の少年は栗ご飯をほおばりつつ色んな話をした。
 秋の味を感じつつ、秋の木々の紅葉も鮮やかな中……。







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あきゅろす。
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