Physics or a Genius


 制服を着たままで寝転んでいた。近くには本を読む青年。彼女はつらつらと手元にある青いラインの入ったビー玉を転がして遊んでいた。親指と人差し指で輪を作った形から、人差し指をしならせて、その小さな硝子玉を弾く。それはころころと進んでいき、何かにぶつかると、決まって彼女の近くに戻ってくる。彼女は黙って、それを繰り返している。
 何度目か、彼女がビー玉を弾いたところで、ちょうど、青年も本のページをめくった。
 そこは何の部屋なのだろう。学校に間違いはないのだが、彼ら以外に人はいない。部室なのだろうか。手作りかと思しき三段の階段状の木組みの上から二番目に青年は座り、その一段下に彼女は寝そべっていた。短くはなく、長すぎもしないスカートから白い脚が見える。ハイソックスの紺が、より一層それを際立たせているように見えた。
 男子学生ならば誘惑されそうなそれに、しかし青年は一切視線を向けることもなく、またぱさりとページをめくった。学ランのボタンを上から二つ開けている。白いワイシャツにはきちんとアイロンがかけてあるようだった。



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