時の流れは悪戯に


 十二月の中旬。陽が射す机は暖かい。一人机に寝そべって背中に暖かさを集めた。

「晴れたな」

 頭から声がした。いつも聞いている声だ。

「ああ。気持ちいい」
「はは、全くお前は……。その歳で日向ぼっこか?」
「悪いか?」
「いいや」

 そいつは俺の前に座った。机と繋がっている椅子に体重がかかる。心なしか俺が寝そべっている机が上に向いた。

「冬だな。今日、最高気温、8度だってよ」
「8度? 道理で冷えるはずだ……」

 俺は顔だけ奴に向いて驚いた。そいつは笑っていた。右目に太陽の光が射す。眩しい。

「ああー……、眩しい……」
「早いな」
「……何が?」
「この授業始まったの、だって九月だぜ?」
「……半袖の時期だな」
「ああ、まだ暑かった」
「……早いな」
「だろ? もうコートだぜ?」

 背中に陽が当たる。暖かい。

「カーテン閉めていい?」

 先生が来た。シャー、と、カーテンを閉める音がする。すっと何かが去る。背中の温かさが柔らかく崩れていく。

「はあ……」
「ハハハ」

 奴が笑った。俺はずっと机に寝そべったまま。
 先生がその後、少しして、いつもと何も変わらないように授業を始めた。







戻る


[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!