[携帯モード] [URL送信]

Main
1



ギラリと煌めく瞳が雅の顔を打ち抜いた。

心臓を拳銃で撃たれたような衝撃と、恐怖がドッと押し寄せてくる。

血にまみれた男は、閉じられていた目を開いてジッとこちらを睨みつけていた。

怖い。怖すぎる。

体中はもう汗でベトベトで、気を緩めたら泣いてしまいそうだった。


「……これ以上……俺に近付いたら……殺す。
わかったら……とっとと去れ」


ものすごい眼力と、地を這うような低い声でそう凄まれ、雅は何度も首を縦に振った。

こんな怪我をしているのに、こんな弱っているのに、なんて迫力だ。恐ろしい。

雅はすぐさま逃げ出したかった。

でも。


悲しいかな。あまりの恐ろしさに、雅の足は竦んでもう一歩も動けなくなってしまっていた。

逃げられない恐怖と、目の前の恐ろしい顔に涙腺が崩壊し始めたころ、突然ふっと男は瞼を閉じた。



「え……」



驚いて彼を見つめる。

ズリズリと壁にずり下がる彼を、視線で確認してみると、どうやらまた気絶したようだった。

た、助かった。

やっぱりこの傷は相当酷いのだろうか。

明らかにさっきよりも顔色が悪くなっているし。

雅は男の顔をみながら思う。



「ど……どうしよう」


震える足をしかりつけながら雅は端正なその男の顔を見つめた。

夥しい血は雅に時間の無さを伝え、目の前の男の顔色が更にそれに追い打ちをかける。

そして何より雅を追い詰めるのは、男の懐から見える黒く輝く『それ』。



「うう……ちくしょう」


ダラダラと垂れてきた鼻水を啜りながらも、雅はもう一度その男に手を伸ばしたのだった。


今度はちゃんと、気配を消して。


[*前へ][次へ#]

2/4ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!