復讐3 6 部活が終わると部員達は更衣室で着替え始めた。 「あ〜、疲れた。早くマック寄って行こうぜ」 隣で着替える藤城がお腹を空かせて言った。 確かに今日は雪村先輩の腹の虫が悪いのかハードな練習をさせられた。 雪村先輩は、何とも思って無いのだろうか…。 こんな状態のまま先輩が卒業したら会う事さえも無いのに―…。 チラッと雪村先輩を覗くと怒った様な表情のまま着替えていた。 すると、先輩は着替え終わると部室から出て行った。 まだ日誌や片付けも残っているのに出て行くなんて…。 気になって俺は思わず後を追いかけた。 「雪村先輩っ!!」 先輩の名前を叫ぶと、先輩は振り返ってくれ立ち止まった。 「何か用?着替え終わったなら早く藤城とマックにでも行けば?」 素っ気ない冷たい態度。 「先輩が俺を嫌いなら、それでいいです。」 「は?誰が言ったよ、そんな事」 「雪村先輩の態度見れば分かりますよ。でも、一つだけ教えて下さい」 雪村先輩は険しい表情になり頭を傾げながらこちらを見た。 「昨日、桃井先輩と何してたんですか?デートしてたんでしょ?あ、もしかしてヤッちゃいました?」 俺はフッと笑った。 あんな桃井先輩とデートなんて、何かあるに決まってるだろう。 喜んでいた桃井先輩のあの嬉しそうな顔。 どう見ても雪村先輩に好意持ってるじゃん! 先輩も何だかんだ言いつつOKしてさぁ。 俺が何も思わないと思ってます? 俺は先輩と本気で付き合ってると思っていたのに、女とデートって普通に考えて浮気でしょ? まぁ、雪村先輩からしたらそんなの浮気にも入らないだろうけど。 なんせ、義理で付き合ってくれてるぐらいなんだから。 「おい、時田」 雪村先輩のドスの効いた低い声。 怒っている証拠だ。 普通の怒りとは違う。 本気でキレてる…。 「何ですか?図星なら正直に言って下さいよ」 しかし、負けずと俺も前に出た。 「図星?っんなわけねーだろっ!!本気で言ってんのか?浮気?バカじゃねーのっ!」 「じゃあ何で桃井先輩とデートなんかするんですかっ!?」 「…そ、それはっ」 「また言えないんですか?雪村先輩が怒ってた時も理由教えてくれませんでしたもんね?俺には何も言えないんでしょ?いや、言うよな相手じゃ無いって事なんでしょっ!!」 感情を抑えきれず声を張り上げて叫んだ。 柄にもなく涙が出そうだった。 恋人同士だと思っていたのに、俺だけには正直に言って欲しかった…。 でも雪村先輩はそんな事思ってなんかいやしなかった…。 「違うって言ってんだろっ!!だいたい時田が悪いんだろっ…!」 「何で俺が悪いんですか!」 「だっ、…って、お前が…」 恥ずかしそうに雪村先輩がもごもごしながら言いにくそうに顔を反らした。 「…っ、最近藤城と…仲良いじゃねーか…」 「……へっ?」 意味が分からず間抜けな返事をした。 「俺と居るよりも、藤城と居る時間の方が多いじゃねーかよっ…」 え?え? そりゃあ、クラスも部活も同じなんだし友達になるには時間は掛からない。 それに、俺も藤城はいい奴って思ってたけど内心では雪村先輩を狙ってるとんでもねー奴だったんだからな! 雪村先輩は気付いて無いだろうけど、俺に探りを入れていつ雪村先輩に近付くか分かったもんじゃない! どうにか阻止しようと今日誘ったまでと言うのに。 「藤城の奴…いつもお前に優しいじゃん。頭よく撫でられたり。俺が触ろうとしてた時はあんなにビクついてたクセにさー。」 「ビクついてた…って、昔の事ですし、怖がってビクついた訳じゃないって前にも話したじゃないですか!」 「藤城に撫でられてるお前…超嬉しそうな顔してんじゃん?藤城が好きなんじゃねーの?」 はぁ? 藤城を好き!? どこまで勘違いしたら気が済むんですか! 「友達にしか思ってませんけど?」 正直に答えを返した。 唖然とするような質問で少し頭が痛い。 どうなったら俺が藤城を好きになるんだろうか…。 雪村先輩の鈍感さが可愛いと思ってしまった俺も何だけど…。 「時田が思ってても、藤城は思って無いかもしれないぜ?アイツもお前の事好きそうだし」 だからっ…! 何言ってるんですかこの人はっ!! 天然ボケもいい加減にして下さいっ! 藤城の好きな人は俺じゃ無く雪村先輩なんですよっ!! 寝ぼけた事ばかり言うからどんどん頭の痛みが強くなって来たじゃないですか―…。 「違いますよ、俺じゃ無く…雪っ―…」 「あ!時田!先に行くなよ〜。荷物も一緒に持って来てやったぜ」 爽やかな笑顔で俺の荷物を手渡す人物…。 藤城――。 毎回タイミングよく出てきやがって…。 俺と雪村先輩の関係を壊して先輩を横取りしようとしてんだろ! そうはいかないからなっ! 今日こそ色々聞かせてもらうぜ 「あぁ。ありがとう藤城」 荷物を受け取ると雪村先輩が歩き出した。 「あ!雪村先輩っ…!」 本当は、先輩に藤城には気をつけて下さいねって伝えようと思ったのに…。 「行っちゃったね。まあ、行こうぜ?な。」 笑顔で言われると何も答えきれず、藤城の言うまま目的地に向かう事にした。 雪村先輩―…。 ←→ |