復讐3 2 自宅に着き、先程の出来事を思い出すと不安になり雪村先輩にメールをした。 本当は話して喋りたいけど、あの様子じゃ電話に出てくれないような気がして…。 『もし、俺が悪い事したなら言って下さいね! 俺ちゃんと謝りますから!』 送信―― 返してくれるかな…。 しかし、メールは一向に返って来ず、気付けば時計の針が深夜を指していた。 先輩からのメールをずっと待っていたせいで、もうこんな時間だ。 さすがにこれ以上待つのはキツいかな。 先輩には悪いけど寝よう…。 そして、また学校で謝ろう。 先輩からのメールも来ないまま、放課後になり部活の時間になった。 昼休みに雪村先輩のクラスに行こうとしたが、拒否られるのが怖かった俺は勇気が出ず行くのためらった。 「はぁ〜」 「どうした?」 「あ!藤城…」 部室で部活の準備をしていると藤城が話しかけて来た。 「朝から元気ないじゃん?大丈夫?」」 「う、うん…ちょっとね」 苦笑いし、この場を誤魔化そうとしたら丁度雪村先輩が入って来た。 名前を呼ぼうとしたけど、言葉が出なかった…。 だって、俺がいるの気付いてるクセに振り向いてくれ無い。 「そうだ!明日休みだし、俺ん家泊まらない?」 いきなりの藤城の提案に驚いていると雪村先輩は着替え終わり部室から出ようとする際、思い切り大きな音を立ててドアを閉めた。 「機嫌悪いな、雪村先輩」 「…そだね」 どうして、こんな事になっちゃったのかな…。 俺…雪村先輩を怒らせるような事した覚え無いんだけど…。 でも、実際雪村先輩は怒ってるし。 こんなんで部活なんか集中出来るわけないじゃん。 部活が終わり水道水で顔を洗っていると雪村先輩の姿を発見した。 そこには、先輩と同じ三年生らしき女子と楽しそうに話していた。 「は?明日?キツいしマジ無理」 「お願いっ!!雪村君じゃないとダメなんだもん」 なにやら、女子が雪村先輩に頼み事をしているようだ。 少し離れた場所からでも分かる美人。 知ってる…あの人。 一年の俺達でも有名な学校一番の美人で知られている桃井先輩だ。 あんな先輩と一緒にいるなんて不安だけが押し寄せて来る。 綺麗な桃井先輩に迫られたら雪村先輩だって…。 それに、俺は男だしカッコ良く無いし…取り柄だって無い。 先輩と全然吊り合えていないんだから。 「ダメ?雪村くぅん…」 可愛く上目遣いで雪村先輩を誘惑する。 ムカつくけど、桃井先輩にあんな風に頼まれたら断る男なんていないんじゃないかと思う。 「仕方ねーな。明日だけだぜ?」 「本当っ!?ありがとうっ!雪村君!」 桃井先輩は嬉しそうに雪村先輩に抱きつく。 しかも、まんざら嫌そうじゃない雪村先輩にも腹が立つ。 俺を散々シカトして明日はデート? マジムカつく。 俺が嫌いになったのなら、そう言えばいいのにっ…!! シカトなんか回りくどい事されるくらいなら一層別れようって言ってくれた方がマシだ! それとも、先輩からしたら俺達は付き合ってるなんて思ってないのかも知れない。 いや、違う。 あの時ちゃんと聞いたもん。 俺と付き合うのかって…。 先輩は承諾してくれたんだ! なのに、どうして俺をシカトするクセに桃井先輩と出掛けるんだよっ…!? 雪村先輩が分かんねーッ…。 胸が苦しくて、どうかなりそうっ。 「あ、いた!時田遅いから心配してたんだぜ?」 見上げると藤城の顔。 遅い俺を心配して探しに来てくれたんだろうか…。 ――優しい奴。 「悲しそうな顔してんなよ?な?元気出せよ」 藤城が優しく俺の頭を撫でる。 暖かい温もりに少し涙が出そうだった。 「あ、雪村先輩。お疲れ様です」 えっ――。 雪村先輩!? 俺は顔を上げれないまま下に俯いていた。 「……あぁ。お疲れ」 いつも以上に低い声。 まだ怒ってるんだ―…。 「お疲れ様…です」 顔を見れない俺は俯いたまま小さな声で挨拶をした。 ――が、 返事は返って来なく、先輩は俺を無視して通り過ぎた。 「機嫌悪いのかな先輩。気にすんなよ時田」 慰めるかのように、また藤城が優しく俺を撫でてくれた。 だけど、 ずっとシカトされていては、俺だって気が治まらない。 このまま、同じ状況を味わうくらいなら自分から立ち向かってやるっ!! どうせ、明日は桃井先輩とデートなんでしょう? 美人と2人きりで、ましてや向こうも好意があるなら男女の関係になってもおかしくは無い。 だったら、その前に蹴りつけてやりますよ。 女の人が良くなったなら、行けばいい。 でも、俺は雪村先輩が好きだし、付き合ってるって思っている。 浮気されるぐらいなら、最後に本音をぶつけて別れてあげますよッ…! 所詮、俺じゃあ先輩を幸せにしてあげれないんですね? そうですよね。 アナタみたいなカッコいい人が俺と付き合ってるって自体ギャグにしか聞こえませんもんね! 身の程知らずですよね俺。 でも、先輩を想う気持ちは誰にも負けませんから。 「やっとで終わったぜ。部活の日誌書くの面倒だよなー。キャプテンの仕事あり過ぎて疲れるっつーの!」 ガチャ―― 部室のドアを開けると、やはり一人で残っている雪村先輩の姿があった。 皆が部活を終え、部屋から出て行くと雪村先輩はキャプテンの務めである日誌を書いていた。 「何か用か。無いなら早く出て―ッ…!!」 ガタンッ――!!!! 「久しぶりに聞く口調がそれですか?雪村先輩」 「時田…」 いきなり俺に押し倒され驚く雪村先輩の上に跨がる。 「ねぇ。俺の事嫌いになったのなら、そう言っていいんですよ?」 「…なっ、急にッ…」 「俺をシカトして楽しかったですか?シカトされるたびに、悲しくなる俺の顔見て楽しんでたんでしょ?」 キレている俺は雪村先輩を見下した。 「はぁ?意味分か…んねぇッ…ンッ、ふぅっ…!!」 嫌がる先輩の両腕を掴み動きを止める。 先輩の言い訳なんか聞きたくない俺は無理矢理唇を奪い塞いだ。 ←→ |