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novel
誘惑からの確証[シュタ→マカ]
※キスまでですが、表現が少々具体的なので、苦手な方は読まないで下さい。
あと、マカが攻め気味です;

















最近、自分の著しい変化に恐怖すら覚える。
自分の事は調べ尽くしたと思っていたのに。

まだ日の光が朱くなり始めたばかりの放課後。
耳に記憶されている足音の一つが、俺の居る保健室に近付いてきている。
その足音は、軽やかに規則正しく、決して重みを感じさせない響きで、俺にはその足音が誰のモノかすぐに理解できた。

そして、その音に自分の鼓動が反応している事も。

俺は、思わず左手で頭のネジを掴み、ギリギリ回した。
足音が、扉の前で止まらないよう願いながら。

…止まった。


『ガタッカラカラカラカラカラ――』


あぁ…開けられてしまった。

違和感の無いよう、さりげなくゆっくりと左手を目の前の机に置く。


「シュタイン博士?いらっしゃいますか?」


無垢な小鳥のような声が、保健室に響く。

何も悟られないように、椅子の背もたれにダラッと前向きに、もたれた格好でバックしながら、声の方へ向かった。


『ガラガラガラガラ――』

「はい、何ですかぁ?マカ」


表情を確認してはいないが、彼女は恐らく苦笑いをしているだろう。


「あの…質問したい事があって…」


とりあえず、作業机の方に誘導した。

これでも俺は先生だから、生徒の質問には答えてやるべきなんだが…
今はこの女生徒、マカ=アルバーンとあまり話したくない。


「まず自分で考えましたか?」

「はい…。でも…やっぱり理解出来ないんです!!」


ん?様子がおかしい。
急に声を大きくして、興奮したような口調になった。
こういう時は…


「先輩の事ですか?」

「え?何で解ったんですか?」


やはり…という軽い苦笑いで返してみた。
するとマカは、ふて腐れたような顔になって、俯いた。


「パパ、また別の女の人と歩いてたんです…。」

「そうですか。」

「だから、博士に聞きたくて。」

「何をですか?」

「男の人って、女なら誰でも良いんですか?」


纏まりの無い話し方をするなぁと思っていたら、困った質問をしてきた。

もう少し前だったら、適当な当たり障りの無い事を言ってやり過ごしていたかもしれない。

しかし、今はそれが出来ない。

出来ない自分が…解らない。


「誰でも良いって事は無いよ。好みもあるだろうし…人によっては違うだろうけど。」


意外に上手くごまかせたな。
と、安堵していた処へ――


「博士はどうなんですか?」


何故そこへ辿り着く?
先輩の…父親の話じゃないのか?
それとも、俺の事が聞きたくて、ワザト…

って、何を馬鹿な考えをしてるんだ俺は。


「どうなんですか?」

「俺は…どうかな。」

「どうかなって何ですか。」


…最悪に曖昧な答えを返してしまった。


「じゃあ、解剖させてくれる人で。」

「じゃあ、って何ですか。ちゃんと答えて下さい。」


…駄目だ。俺の方が冷静になってない。
馬鹿な答えばかり返してしまう。
落ち着け、何も勘繰るな。
普通に答えればいいんだ、普通に。


「…たった一人で充分だよ。」


この言葉が、埋もれている真意が、彼女の耳に届いていなければいいが。


「ですよね!」


明るい声。
この目が勝手にその声の主を捉える。
柔らかそうな唇の両端が上がり、綺麗な緑の瞳が瞼に少し隠れ、それが微笑みだと解らせる。

そういう顔を簡単に見せないでほしい。


「もういいですか?」


少しだけ不機嫌な声で言ってみた。

こういう話を、君から問われたくないんだ。
早くここから出て行ってほしい。

何も起きない内に…


「まだあるんですけど…。」


俺の言い方のせいか、急にしおらしく答えてきた。

やばい…予想外だったから、耳から胸へダイレクトに衝撃が来た。

もし今、煙草を吸っていたら確実に噎せていただろう…良かった、吸ってなくて。


また優しく答えよう、その方が楽だ。


「何ですか?」


優しく、けれどさりげないように聞いてみた。
マカの表情が安堵に変わり、すぐに真面目な顔になった。
結構重要な話なのか?と思ったので、背もたれの無い丸椅子に座らせた。

スカートが短いぞ…もっと恥じらいを持ちなさい…座ると余計に危なさが解る。
プリーツが下に流れ、普通に立ってる時より白い太股が見えている。
彼女の性格のおかげで、行儀よく膝を閉じて座っている事が救いだ。

何故、そう思うのか、そう感じるのか、答えはある。
でも、そんな形の無いモノが自分の中に生まれるなんて、認められない。認めたくない。

…何故?


「博士?」

「…あぁ、聞いてるよ。」


うっすら心配そうな顔をされた。

いつの間にか右手を伸ばし、彼女の頭を髪が乱れない程度に撫でていた。

彼女の顔が目に入り、恥ずかしそうな表情に、また鼓動が変な打ち方をした。

震えそうな右手をそっと離し、背もたれの上で腕を組み、顎を乗せた。


「で、他に聞きたい事があるんだよね?」

「はい…、あの…。」

「言いにくい事?」

「…私、どうしてパパが女の人を好きなのか気になって。」

「んー?それはさっき話したでしょう?」

「そうじゃないんですっ。何がそんなにいいのかなって。愛してるって、どういう事なのか解らなくなって…。」


最悪な問題を出された。

マカは【愛してる】とは何なのか?と聞いてきている。
よりにもよって俺に。

…ダレる…


「それこそ人によって違うと――」

「傍にいるだけじゃ駄目なんですか?笑ったり、泣いたり、一緒に過ごすだけじゃ…。」


彼女にとってはかなり深刻な問題ならしく、涙声になり始めていた。

そんな姿を俺に見せるな…。

何とか泣かせないようにしたいけれど、頭の良い彼女に下手なごまかしは逆効果だと解ったので、いっそ具体的に言ってみる事にした。


「マカ。」

「はい…。」

「男と女というのはね、人間という生物であるがゆえ、体を求めあう本能を持っているんだよ。」

「はい…?」

「先輩は、人よりその本能が強くて、たくさん求めてしまうんだよ、温もりを。」

「はぁ…。」

「ん?」

「何だか…結局ただエロいだけにしか…。」

「まぁ、そういう事だと思うけど。」


解ってるんじゃないか、俺に聞くまでも――


「どうしてエロいんですか?」


な…なんて事を口にしてるんだ、この娘は!
自分で何を言っているのか解っているのか?
いや…ここでツッコんだら怒りだしそうだ。
えぇーっと、どう答えれば…


「き…もち良いからじゃないかな?」


何を口走ってるんだ俺は…
まだこんな子供に…しかも先輩の娘に…
バレたら相当面倒な事に…


「気持ち良い…ですか…。」


食いついちゃったぁー…
出来る事なら忘れてほしい。
気持ちいいとかそういう事を真顔で口走る彼女は、妙にエロい。


「博士。」

「はい?」


今度は何だ?あぁ、もう終わりかな?


「誰でも気持ち良いんですか?」

「…は?」

「人間の本能って言ってましたけど、博士はそんな事なさそうだもん。」

「それは、俺が人間じゃないって事ですか?」

「違いますっ。博士は解剖して喜んでるイメージしかなくて…」


…それ、もっと酷いんじゃないか?

マカにとって俺は男と認識されてないのか?確かにオッサンだけど。
それとも、男が解ってないのか?
エロいとか口に出しながら、エロいの意味を解っていないのか?

いや…それもあるだろうけど――


「マカ、気持ち良いってどういう事か解ってないでしょう?」

「え?それは…そうですよ、私が知ってる訳無いじゃないですかっ。」


知らないと言いながら頬がうっすら朱くなる彼女に、触れたくて仕方ない。
そんな自分を抑制しつつ話す。


「経験すれば解るんじゃないですかね。」


抑制しながらよく言えたな。
自分を誉めてやりたいよ。


「経験…。」

「大人になったら機会もあるでしょ。」

「…。」


マカが無言になった。
どう捉えたんだろう。



まだ子供だと、はっきり口に出来なかった。

俺が…心の底では彼女を子供だと思っていないから…。

細く折れそうで、成長途中の体なのに。
小鳥ような声なのに。
その小さな頭の中で、悩み、苦しみ、真っ直ぐに答えを求める。

立ち向かう勇気を持った…女性。


『ガタッ』

「ありがとうございました。」


内容はどうかしてるが、立ち上がり律儀に頭を下げる彼女。
ホント、しっかりしてるな…。


「あ、あぁ、納得したかい?」

「えっと、もう少し調べたいんで、ソウルとかにも聞いてみます。」

「え…?」


今…何て…?


「私より知ってるかもしれないし。」


それは…駄目だろ…ソウルは君の事をパートナー以上の想いで見てるんだぞ?
ヘタな事を聞いて刺激したら、何をしてくるか。
しっかりしてるのに、何故解らないんだ。
大体…


「何を聞く気なんですか…?」

「え…とりあえず経験を…。」


おいおい…。


「いや、まだソウルは…。」

「前にソウルの部屋で、あの手の本を見つけたんで、私よりは知ってますよ、きっと。」


言いながら、また少し朱くなっている…。

止めろ…そんな事を聞いちゃ駄目だ…。

あれ…アイツの部屋に入ったのか?どうして?片付ける為?それとも――


『スタスタスタ――』


あっ、待ってくれっ。

行くなっ…。

行くな!!


「では、失礼します。」

「―――マカっ!!!!!」


彼女がドアに手を掛けた瞬間、自分でも予想していなかった大声で彼女を呼び止めていた。
保健室のいたる所がビリビリ震え、マカも跳び上がりそうな程ビクッとなっていた。


「は…はぃ…。」

「ちょっと、戻っておいで。」


明らかに怯えさせている。
解っているのに、どうしようもない。

背筋を伸ばし、真っ直ぐ彼女を見る。
ゆっくりマカは振り返り、不安げな顔をこちらに向けている。
出来る限りの笑顔で手招きをすると、躊躇いながらも歩み寄ってきた。
その間に、背もたれを後ろに回し、座り直した。

マカが、俺の手の届かないギリギリで歩みを止めた。

何だかイラッとくる。

少し椅子から体を浮かせ、右手でマカの左手を掴み、引き寄せた。


「博士っ?」


彼女の左手が震えている…

当たり前だと思っているのに、イライラが増加する…。

左手で少し乱暴に眼鏡を外し、彼女を見つめた。


「マカ、さっきの話をもう少し詳しく話すよ。」

「え、はい…。」

「男性は、女性よりも求める気持ちが強いって言われてる。
けどね、それに【理性】という鍵をかけて制御しているんだ。
その鍵は、何もしなければ開かない。それは一応、先輩も一緒だよ、緩い鍵だけど。」

「緩い…鍵ですか…。」

「その鍵はね、女性のちょっとした仕草や行動や発言で開いてしまうんだ。女性にその意図が無くても、男性には…」

「そんなの、勝手ですっ!」


さっきまで怖くて震えていたのに今度は怒りで震えているらしい彼女の身震いが、左手から右手へ伝わってくる。

小さな手が、力強く握り返してくる。

今、君は…一番まずい手と繋ぎ合っているのに。


「勝手かもしれないけど、仕方ないんだ。だから、刺激するような事は言わないでほしい。ソウルにも、誰にも。」

「どういう事ですか?私はそんな変な事は言いませんっ。」


ほら、こうやって自覚が無い。


「言おうとしてるじゃないか。男に経験を聞くなんて、誘ってるようなモノだよ。」

「わ、私とソウルはそんな男とか女とか、そんな関係じゃありません!」


俺には聞いたじゃないか…

俺を信頼して?

違う。

俺の事はどうでもいいんだ…。


「ソウルもそう考えてると思ってるんだね。」


意地悪に鼻で笑ってやった。


「マカは先輩を見てるから、もっと警戒心が強いと思ってたけど、全然ダメだね。
自分が女だって事も忘れて、男友達に不用意に触れたりしてるんじゃないのか?」


「私はっ…まだ子供ですから。」

「そんな事ないよ。」


あ…思わず余計な事を言ってしまった。


「…さっきは子供扱いしたじゃないですか。」

「子供だとは言ってないよ。」

「大人になったらって言ってましたっ。」


何だか子供の喧嘩みたいになりそうだ。
こんな事でムキになるなんて、俺も彼女もまるで子供――


「もうっ!」


そう声を出した彼女が、空いている右手を伸ばし、俺の左手を掴んだと思ったら、それを彼女の柔らかな頬へと引き寄せ、その温もりと感触を、俺の掌から脳へと伝達した。


「ほらっ、こんな風に触れても何とも無いでしょ?!」


ふざけた思い付きを喰らわせてきた彼女の頬は、本当に柔らかくスベスベしていて、
その温もりは、理性の鍵を開けるには充分だった。

彼女に掴まれたこの左手は、そのまま後頭部へ滑り込み、グッと体ごと俺の方に彼女を引き寄せる。

彼女の顔を自分の顔へ近付け、唇と唇を触れさせた。


「んっ?!」


お互いの唇が思っていたより乾いていて、ただの肌と肌が触れたような感触だったけれど、温もりだけは確かに他人のモノだと解らせてくれた。


「んはっ!」


左手の力を軽く抜いてやると、彼女は頭を後ろに引き、30cm程離れた。

その左手は離したが、まだ右手は彼女の左手を握ったまま離さない。


「…な、ななな…。」

「何が『ほら』だ。『触れても何とも無い』だ。俺を挑発しといて、無事でいられると思ってる方が可笑しいんだよ。」


驚き焦り、みるみる朱くなる彼女の顔が、堪らなく胸を掻き乱す。


「だっ、だからって…。」

「これで解ったでしょう?解らないなら、またしますよ。」

「う…。」


真っ赤な顔で、俯く彼女が…

可愛くて

可愛くて

壊したい…

けれど、これ以上は本気でまずいので、そっと掴んでいた彼女の左手を離し平静を取り戻そうとした。

その時、彼女が何を思ったか左手に力を込め、俺の右手を離さなかった。

一瞬、心臓が停止したかと思った。


「博士…。」

「はい?」

「もう一度だけ、してくれませんか?」

「は?」

「その……キス……を…。」

「…はい?」


俺は、起きながら妄想でも始めたのか?

それとも、狂気に飲み込まれたのか?

幻聴が聞こえるなんて、末期だろ。

幻聴…じゃないのか?


「博士の唇…柔らかくて…少し…気持ちいいなって思ったんです…。だから、何かつかめそうな気がしてっ。」

「マカ…。」

「はい。」

「それを誘ってると言うんですよ…。」


何だか、俺はそろそろ死ぬのか?と思ってしまう。


「う…。と、とにかく、もう一度だけさせて下さいっ。」


何を頼んでいるんだこの娘は…。
俺をどうにかする気か?どうにかして欲しいのか?

もう…思考が追い付いて来なくなった…


「いいよ…。」

「はいっ。ありがとうございますっ。」


そういうと、やっと彼女は左手を離した。

何なんだこの会話は…。
可笑しいにも程があるだろ…。

俺は…まだ何も伝えてさえいないのに…。

彼女の気持ちが見えない…。

俺とでいいのか?

本当にいいのか?


「じっとしてて下さい。私からしますから。」

「なぁ…。」

「何ですか?」

「…俺でいいのか?」

「え?」

「俺とでいいのか?」

「…一度しておきながら、聞いてこないで下さい……」


ごもっとも。

俺の足の間から椅子に片膝を着き、俺の両肩を掴んで、少し赤らめた顔を近付けてくる。

抱きしめたくて、壊れそうで、胸が弾け飛びそうな気がした。

俺の瞳に、そんな想いが映っていない事をひたすら祈った。

彼女の瞳に映っている俺が、少しずつ近付いてくる。
こんな俺を見る事があるなんて、微塵も信じていなかったのに…


「ん……」


また、柔らかい温もりが唇に触れる。
優しく、けれど存在を確かめるように動く彼女の唇が、俺の体の自由を奪っていくように、勝手に両腕が動き出し抱きしめようとする。


『ちゅっ…』


俺の唇を確かめている彼女の口が少し開閉し、その中でリップ音が鳴った。
それが引き金になってしまい、俺の腕は力強く彼女を抱きしめ、離れないように頭を掴んだ。


「んぁっ…んっ…!」


苦しがっている仕草でさえ、可愛くて堪らない…。

彼女の唇に舌を押し付け、こじ開けてゆく。


「んっ…んんっ…ふぁかんふ…!」


きっと『博士』と言おうとしたんだろう。
口が開いたので、ここぞとばかりに舌を入れた。

舌を噛みちぎられたとしても後悔はしない。

彼女の舌を探り当て、絡ませる。
柔らかくて湿ったソレのザラつきを確かめると、彼女の体がビクビク震える。

噛みちぎる事なく俺の舌を受け入れる彼女の気持ちを知りたくて、頭を押さえる手を緩めた。

彼女は…それでも離れなかった。


『クチュ…クチュ…』


卑猥な音が、二人の間で響く。
彼女と俺の少し荒い息遣いが、時には重奏のように、時には輪唱のように混ざる。

まるで恋人同士のような口づけが、俺に錯覚させる…。

俺達は…心も繋がってる…?

甘い甘い口づけを交わして潤った唇を、永遠に離したくない…。

叶う訳が無いのに…

許される訳が無いのに…

こんな事は…認められない…!!


「ん……ん…んはぁっ?」


俺はマカの上半身を引き離した。

二人の唇を繋ぐ透明な糸が、一瞬で切れ、消えていった。

彼女の瞳が、トロンとしつつ疑問も浮かべている。


「もう…解ったでしょう?」


いつもの調子で作り笑いをしようとするのに、上手く笑えず苦笑いになる。

沈んだ顔をしないでくれ…。
きっと…君も父親と一緒なんだ。
甘い感覚を求めて、狂ってしまっただけなんだ。

俺じゃなくても…


「はぁ…はぁ……博士ぇ……。」


何だ…どういう意味だ…甘いような、淋しいような、困ったような、求めるようなその声は…。

まだ乱れている息を少しずつ落ち着かせてゆく彼女は、俺から離れ、後ろにあった椅子に座った。
朱くなっていた頬が、冷めるように白くなってゆく。


「ちょっとだけ…解りました…。」


残念そうに聞こえるのは幻聴だ。

絶対に幻聴なんだ。

騙されるな。

惑わされるな。


「すみませんでした…無理なお願いを聞いてもらって…。」


俯き、膝の上に置いた手を握り締めている。
そんな言い方、まるで俺が嫌がってるみたいじゃないか。


「さっきは『ありがとう』だったのに、どうしたんですか?」

「だって…。」


その先を言わない彼女に、どうしても言ってみたい言葉が頭に浮かんだ。


「俺は、無理なんてしてないよ。一度目は俺からしたんだし。」


その言葉に反応して、上目使いで見上げてきた瞳があまりに美しくて、思わず耳元に顔を近付け――


「凄く気持ち良かったよ…。」


と、浮かんでいた狂った言葉を囁いてしまった。

彼女の顔が真っ赤に染まってゆく。

俺の心が…満たされてゆく…。


『ガタッ!』


マカが勢いよく立ち上がった。


「か…帰ります!!」


そういうと、足元をキョロキョロ見始めた。
もしや…と思い、


「荷物はソウルに頼んだんじゃ――」


と俺が言い終わる前に、マカはさっきより真っ赤な顔で、恥ずかしいのをごまかすように睨んできた。

さっきまで俺と絡んでいた唇が、への字に曲がって面白い。

クスッと笑うと、真っ赤な頬を膨らませて拗ねた。

可愛い…。

スタスタと競歩のように早く歩き、ドアを勢いよく開けるマカは、本当に可愛い。
ドアがバンッ!!!という物凄い音でビリビリ揺れていたけれど。

俺は座ったままボーっと彼女の姿を見ていた。

ドアを開けたまま、一時停止している。

どうしたのかと思ったその時――


「また…来ますっ。」


と言ってドアをまた勢いよく閉めた。



無防備になっていた心に流れ込んだその言葉で、暫く放心状態になってしまっていたらしい。

外はもう夕闇空で、太陽の残り火の緋色が、微かに地平線を描いていた。

机の上に置いていた煙草の箱から一本取り出し、一緒に置いていたライターで火を付けた。

そういえば、最近吸った覚えが無い。


「認めるしか無いなぁ…。」


自然に口から出た言葉。

マカと重ねた唇。
絡ませ合った舌。
夢のような時間だった。

くわえた煙草を胸いっぱいに吸い込み、ゆっくり吐いた。


形も無く、見えもしないモノに確証を得るなんて馬鹿げているけれど、確かにある。

マカを好きだと想う、この気持ちは。

何故なら…


『また…来ますっ。』


最後の言葉が、
まだ体を支配しているから。








後書き↓

はい、すみません。(早!!)

初めて書いた魂喰小説だったんですが、う〜ん…何とも妄想満開&無茶苦茶;
そして長い。
そりゃ載せるの躊躇うわって話です
両想いっぽいですが、マカはまだ微妙な気持ちです。
マカの気持ちをはっきりさせる続きを書きたいと思っていたな〜…(過去形)

これキスまでだから年齢制限引っ掛かりませんよね…?そう信じたい;




こんな駄文を読んで下さり
ありがとうございました。

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