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novel
SYMPATHY×SYMMETRY[キッド→←マカ]

私は今、死部専の中庭へ向かっている。
教室にいるとブラック☆スターがバスケしようってしつこいから逃げ出したのもあるけど、木陰でゆっくり本を読みたいなと思ったのも事実で。
図書室でばっかり行ってると皆に引きこもりって言われるし…。
あ、ううん。皆じゃない。
彼はそんな事言ったりしない。

歩きながらそっと彼の顔を思い浮かべる。
いつからだろう…キラキラと光るあの金色の瞳が私を捉えると、私の波長が否応なく乱れる。
だから、最近は彼の顔を直視出来なくなっていた。

ほら…思い浮かべるだけでも乱れる。
胸が苦しくなって熱くなる…。

やだな…。
いっぱい話したいのに。
いっぱい遊びたいのに。
一緒に笑い合いたいのに。
こんなの望んでないよ…。

胸に抱えた本が私の痛みを受け止めてくれる。
ごめんね、強く抱きしめちゃって…

思い耽りながら歩いてたから、目的の中庭の一番大きな木の近くに来るまで気が付かなかった。

黒い靴。
黒い服。
死神様の飾り。
ちょっとすっ飛ばして黒い髪。

そして、白い三本線。

どう見てもキッド君だ…!!!

頭を木の方に向けて、両手を頭の後ろに回してスヤスヤ眠ってる。
足を軽く広げて…シンメトリーになってる。


「ふふっ。」


流石キッド君だな〜、でもちょっと笑っちゃった。

キッド君が寝てる横に座って木に凭れた。
足を伸ばして私もシンメトリー。

こんな近くで二人だけなんて…。
最近じゃ絶対考えられない。
絶対魂抜ける…。
金色の瞳が隠れているから、こうやって隣に座れただけ。

どうかまだ起きませんように…
起きるなら私が居なくなってからで。

股の上に本を開いて文字の羅列に目を通す…

…。

………落ち着かない。

そりゃ起きてる時よりマシだけど、隣に居るんだし。
だったら他のところに行けばいいって話なんだけど!!
…ここに…居たいんだもん…

あぁっ!!もうっ!!
本はもういいやっ!!

パタンッ!と両手で本を閉じたら、自分でしたのに驚いて心臓がビクッとなった。
声が出そうになったのを我慢しながら彼の様子を伺う。

…起きてない…。

ふぅっと息を吐いて片手で胸を押さえる。
欝陶しい心臓…。
もう…ホントにヤダ…。

いっぱい見たら免疫つくかな…。

本をキッド君の居ない側に置いて、そっと顔を覗き込んだ。

透き通るような白い肌。
寝てるから少し緩んだ眉。
鋭い瞳を包む瞼に長い睫毛。
スッと通った鼻筋を辿ると、少し開いて呼吸する綺麗な唇。

もし女性だったらモテモテだろうな〜…。

キッド君が女子だったら、ただの友達としての関係以上を望んだりしない…よね、私も。
私が男の子だったら良かったのかな。

木から背中を離してキッド君の横に寝転んだ。

横から見ても綺麗。

私がこんなに綺麗だったら、好きな人と付き合うのなんて簡単なんだろうな…。


「…ごめんね…」


少し体を起こして絶対に聞こえない声で囁いてからスッと顔を近付けた私は―――

ちゅっ。

彼の柔らかい頬にキスをした。
二度としないから、許してね…。
眠ってる横顔を見ながらまた寝転んだ。

サワサワサワ…

風が葉っぱを揺らして気持ちいい…

元から遠い死部専生の笑い声が更に遠く聞こえて…



ん…。
ふわふわした感覚で、俺は薄く瞼を開いた。
この木が、下から見上げてみると風さえ吹かなければシンメトリーに見えたので、見逃さぬ為に寝転んで見ていたら寝てしまったようだ。
最近の悩み事のせいで深く眠れていなかったからだろうな…。

ん?横に人の気配が?
横目でチラリと見ると、結われた色素の薄い綺麗な髪と白い頬とプルリとした可愛い唇…

も…もしや…

マカ?!?!?!

思わず跳び起き、声をあげそうになった口を片手で思いっ切り押さえた。
が、一瞬で足りない事を悟りもう片方の手で更に上から押さえた。

口から魂まで出るかと思ったぞ…。
最近の悩みのタネが隣で寝ているなんて、誰が予想出来るものか!!

そうなんだ…最近、マカがどうも俺を避けている気がしてならん。
俺が何かマカの気に障る事をしたのか、よそよそしく振る舞われてしまうようになった。
いや、しないように無理しているように見えるのだ。
そんな態度が、凄く気になってなかなか眠れなくなっていた。

嫌われているのかと思っていたが…

俺の方が先に居た筈だ、だから後からマカが隣に…

う…動悸が抑えられん…

何故、隣で寝ているのだろう…?
凄く気持ち良さそうだ。
あの麗しいエメラルドグリーンの瞳が薄い瞼に隠されている。
その大きな瞳に見つめられると、自分からは反らせない。
けれど、最近は向けられる事も無くなり、近くで真っ直ぐ見る機会がなくなっていた。

俺は…その内、そのエメラルドグリーンを探してしまうようになったのだ。
まるでストーカーにでもなったようで虫酸が走る…それでも止められない俺のこの不甲斐なさはどうだ?!!!

あぁ…鬱だ…死―――


「んん…」


ビクッ!!!
と精神も肉体も硬直した。

何だ…起きたのかと思ったぞ…。

声を漏らした唇を見ると、少し開いて色っぽく見える…。

触れたい…

い、いかん!!それでは起きてしまうでは無いか!!いやいやそういう問題ではなくてだな!!

…。

………少しくらいならいけるか?

片手を伸ばし、人差し指をその唇に近付ける。

そっと、僅かにそっと指先で触れた。

ふに…

という擬音がピッタリな程の柔らかさに驚いた俺は勢いよくその手を引いた。
俺だって硬い訳では無いが…うむ、俺より柔らかい…。

な、何をしているのだ俺は!!

マカにバレたらマカチョップが降ってくるな…。
それどころか無視されるかもしれん。

何故だ…何故こんなに苦しい気持ちにならねばならんのだ…!!
こんなに可愛い顔をして…!
きっとすぐに誰かのモノになってしまうのだろうなっ。
いや、俺が気付いていないだけでもう既に…

苦しい想いが俺を掻き乱す。

今なら、彼女の唇を奪える。

今だけ、彼女を自分のモノと思える。

俺の初めての口づけはマカがいい。

マカじゃなきゃ駄目なんだ…。


「マカ…」


ゆっくりと顔を近付け、彼女の息遣いがどんどん近くなる。
引力でもあるのかと思うくらい引き寄せられる…。



ビュオォオオオォォォ…

一陣の強い風が俺の顔に一枚の葉を吹き付けた。

ペシッ…と叩かれたようだ。

そうだな…こんな事は卑怯だ。
告白もしていないというのに、まるで夜ばいのような事をするとは。
この場合は昼ばい、か?
むぅ…とにかくこんな事ではいかん!!
死神の名折れだ!!

俺はバタッとまた寝転んだ。
そしてマカの寝顔を見れば、また動悸がする。
しかし、もうあんな事はしまい。
大切なマカの大切な唇を卑怯な手を使い奪うなど、決してあってはならない。

…俺が女なら、口づけしたいと思わないのだろうか…

良き友人というだけでは満たされなくなってしまったけれど、それでもずっと仲良くしていきたいんだ…

手を伸ばし、彼女の前髪をサラリと指で撫でた。

可愛い、可愛い、俺の想い人。

どうか俺を見て下さい。



KILL〜コ〜ン カ〜ン コ〜ン♪



「う〜ん…ん?チャイ…ムっ?!ヤバッ!!」


跳び起きようと上半身を起こす体勢に入ろうとした私の肩を、目の前の人が掴んで押さえた。


「おはよう、マカ。」

「あっ!!キキキッド君…っ!!」


そうだった!!私、キッド君の隣に寝転んで…そ、そのまま寝ちゃったんだ!!
こここんな近くでこの目に見られてどうしよう!!
あ゛!!寝顔見られた?!ぎゃああ!!
恥ずかしくて絶対顔真っ赤だイヤぁあ!!
もう何で寝ちゃったの私ぃ…!!


「マカ、マカっ。」

「えぇっ?!!な、何?!」

「次の授業までサボらないか?」

「……えっ?!だっダメだよ!!そんな…えっ?!」


どういうつもりなの?!
だってそれって二人きりでって事で!!
そんなの…私の心臓が持たない…!!


「…マカが寝転がると、シンメトリーになるんだ。だから、な?」


あ…そういう事か…
その言葉でちょっと落ち着いた…。

私の肩を掴む手はまだ離されなくて、無理矢理振りほどくなんて出来ないから仕方なくまた横になった。

キッド君が体ごとこちらを向いて、私達は向かいあってる。
さっきよりもキッド君の顔が近いから目のやり場に困るよ…


「マカ…どこを見てるんだ?」

「えっ?どこって…草…とか…」

「草なんかより見る物があるだろう?」

「へ?」

「俺の目を見ろ。」


落ち着いた低い声で言われたもんだからビックリして、渋々キッド君の目を見た。


「やっと見られた…美しいエメラルド…。」


う…美しい?!!エメラルド?!!


「なっ何言ってんの?!」

「反らすな。」

「き、キッド君?!!」


あ…顎を掴まれて逃げられない…!!


「マカ…何故おれの隣に寝ていたんだ?」

「う…。」

「俺はてっきり嫌われているんだと思っていたが。」

「っ…!嫌ってなんかないよ!そんな訳ないじゃん…。」

「そうか、良かった…。む?では何故、最近ずっと目を反らしていた?」

「そ、それは…。」

「それは?」

「…キッド君の瞳が眩しいから…。」


むむむ無茶苦茶な言い訳しちゃった!!


「俺の瞳が?」

「そう!」

「眩しいのか?」

「そう!」

「他は誰も反らさないが。」

「そう…かもしれないけど…。」

「俺はマカの瞳を見ていたい。」

「……ぇ?!」

「だからマカにも見てほしい。」

「キッド君…?」

「ずっと、傍で。」

「それって…。」

「好きだ…マカ。」


えぇぇええええっ!!!???

心の中で言ってるけど声にならない!!!


「困らせているのは解る、しかし…」

「私も!」

「むっ…?」

「私も、キッド君の瞳…見ていたいよ、ずっと。」

「…マカ…!!」

「もう、真っ直ぐ見れるよ。」


不安じゃないから…




満面の笑みで俺を見てくれるマカ。

共鳴するように、俺も笑う。

俺達は今きっと、空から見ればシンメトリー。








後書き↓
久しぶりに勢いで書いた気がします。
どんだけマカの唇に触れるネタ好きなんだ!!と自分でツッコんどくんで許して下さい;

好きなように想像しやすいように、右手左手等の細かい表現を省きましたがどうでしょうか?
視点もマカ→キッド→マカ→キッドと変えてみました。その方が楽だったのかと言われれば…HAHAHA…

恥ずかしがりながら以外に積極的なマカと
素直なのに肝心なところで消極的なキッドなイメージで、その二人が同じような行動をして同じ気持ち…というのを表現したかったんですが…
表現出来てるかはまぁ…もういっか;

あ…一応昼休みの設定です;




こんな駄文を読んで下さり
ありがとうございました。

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あきゅろす。
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