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01
実の弟ならどんなによかっただろう、あたしのカレシは可愛い年下で可愛い従弟だ。

「ユエ、起きろよ!」

「あー、はいはい」

イトコは結婚できないと嘯いた遠い昔の話は今は何処へ言ったのだろうか、その頃の彼は私が「お嫁にしてあげる!」と喜んで抱き締めたくらいだ。そのくらい可愛らしいお姫様みたいだったんだ。

「ユエねぇたまってさ、着せ替えのお人形さんみたくして遊びに行く度に私の御下がり着せて‥バイト先のゼロ切り商品持って帰ってリメイクして‥」

彼が中学を卒業する間近で私は大学進学のために都会から少し離れた田舎にアパートを借りて独りで生活をしていた。姫様の写真を沢山持って、寂しいときにはスカイプでチャットをした。彼がこちらに進学を決めたと母親から聞いて驚いたが、また着せ替えごっこができると、被服装飾科に籍を置く私はルンルン気分で駅まで迎えに行った。

「あ、ユエ姉ぇ!」

「‥‥へっ?」

「へって、迎えに来てくれたんだろ?」

「あの、どちら様で?」

「‥あー、えっと、そのよぉ‥あれだ、長曽我部元親だ」

「ちょそか‥ち、か?チィちゃん?」

身長は沢山伸びていたわと聞いていた、でも変わったのはそれくらいよと言った母親を軽く恨んでしまった。

「‥あ、あの、やっぱり」
「‥変わりすぎ!」


「うお!」

「あたしのハニィは?プリンセスは?お嫁さんは?」

「えー‥」「‥まっちょ」

がっくしと肩を落とせば彼は苦笑していた。やっぱりだめかなとションボリしていた。それが小さい頃の彼を彷彿とさせて、キュッと大きな手を握って「そんなことないよ!もちろんいいよ」と行ってしまった。

「‥いいのかよ、ユエ姉ぇ」

「うん、いいよ!可愛いチィちゃんのお願いだもの」

ニッコリ笑えばチィちゃんも笑ってくれた。取り敢えず車に詰め込んで(だってあたしの車が軽なんだもん!)チィちゃんはシートを一番後ろまで下げてグッタリしていた。どうやら長旅でお疲れらしい。荷物は後から届くと聞いていたし夕飯には少し早い時間だった。

「チィちゃん、夕飯どうしようか」

「あー、なんでもいいけど」

「この辺知らないものね、少しドライブでもしますかお姫様」

「姫言うなって」

車を走らせていると昔話に華が咲いた、途中で夕飯にと立ち寄ったファミレスではお互いに知らない時間を埋めるようにああでもないこうでもないと何時間も居座ってしまった。

「チィちゃん、コンビニでお酒はいかがです?」

「おう!野郎共と良く飲み明かしたからなぁ、俺は強いぜ?」

「ふふ、じゃあ寄ろうか?丁度うちにアルコールがなくてさ」

適当に買い漁って、帰宅すればチィちゃんは恐る恐る「お邪魔します」と靴を脱いだ。私はストップを掛けて先に短い廊下を歩いた。

「下着でも畳み忘れたのか?」

「違うよ!もぅ!」「あん?」

「チィちゃんは今日から此処に“帰って”くるんだからさ」

「ああ、今日から世話になります」

「あー!もう!違うよ、そうじゃなくてね」


「ただいま」でいいんだよ、「お帰りなさい」


そう言えばチィちゃんは泣いてしまいそうな表情になって俯いて小さく「ただいま」と呟いた。


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あきゅろす。
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