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お市(3ネタ含)
浅井も織田も皆滅されました。忍であった私はひとり、生き延びたお市様のお供を致しております。初めは二人で地下にひっそりと暮らしていましたが、今では残党が第五天魔王として使われております。私はあの残党と戯れるつもりは御座いませんでした。

毎晩、丑三つ時となるとお市様は泣いてしまわれるのです。ほんの半刻ではございますが正気にお戻りになられ、呼ぶのです。長政様を信長様を‥私は赤子のように泣くお市様を見ていられなくて、忍ならお得意の変幻の術で長政様に化けて優しくお市様をあやす毎日を過ごしておりました。

「市、もうなにも恐れることはない」

「な、ながっ‥ながまささまぁあぁあ」

「もう良い、もうよいのだ‥何も、市‥私の傍で寝るといい」

「はい‥ながまさ、さま」

寝付いたお市様はとても安らかでした。明日にはまた戦が待っているのです、どうか今だけは誰にも縛られずに年相応に‥

「‥ねぇユエ」「はい」

「どうしてユエは市に着いてくるの?」

「ご迷惑でしたか?」

「ううん、違うの、市ね‥嬉しいの。お前だけは市を置いていかないよね?」

「はい、ユエはどこにもいきません」

華奢なお市様を抱き締めて、その日から長政様を求めることはなくなりました。ただ私を呼ぶようになってしまいました。

「‥にいさま、市が傍にいるから」

その日、天海という男に利用され信長様が蘇った日、倒れた信長にそっと寄り添ってました。

「‥ユエ」「はい」

「市は、にいさまといくわ」

「はい」「ユエは自由、だよ」

「はい、お市様‥」

ごめんね、と言ったお市様は幸せそうでした。自らの生きる意味を見出だして下さったことが嬉しくて私は忍びのくせに涙を流してしまいました。

「ねぇ、ユエ‥ユエは幸せ?」

「はい、お市様が幸せそうなお姿を見ることができて‥ユエは幸せに御座います」

「ユエ‥ありがとう」

「勿体無いお言葉です、お市様」

一本の小さな黒い手に包まれて


お市様から譲り受けたソレは私が死ぬまでお側に居てくださりました。

「蘭丸さま‥」


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蘭丸は生きていてほしいけど、織田軍だからきっとお市のあの黒い手に含まれているだろうなぁ

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